君と出会うために(2)

 

 

 

 

 

何か、変な奴だったな・・・。

 

呼び出された時にクラス分け表で名前を見てから、オレは坂城 由良という人物がどんな奴か会うのが楽しみだったのだ。

それが・・・外見は優等生君で、少々残念だった。けど、中身もそうなのかと思っていたら全然違うのだから。

 

「おーっす、凪!ひさしぶりやな〜。」

教室のドアを開けると、威勢の良い大阪弁が聞こえてきた。

オレの友達で大阪弁の奴は、一人しかいない。

 

「ははっ、相変わらず元気そうだな?健太郎。」

「当たり前や!」

 

オレらが、再会の喜び()をしていたら、教室の奥にいたクラブの仲間が次々と声をかけてきた。

 

少しの間、たわいもない話をしていると健太郎が

「ところで、凪。新入生連れてくるんとちゃうかったん?」

由良のことか・・・‘校長に呼ばれてるから、先に行ってて’って言われたけど。

一体、何をしでかしたんだ??

 

すぐ後ろで、ドアを開ける音がした。

「由良!入学早々、何やらかしたんだ?大丈夫だったか?」

「大丈夫、大丈夫!住む所の手違いがあっただけだから・・・。」

 

入学式で見た笑顔と変わりないってことは、心配ないな。

 

・・・・・ビックリした。そんなことを考えて、ホッとしている自分がいることに。会ったばっかりで、お互いの名前ぐらいしか知らない仲だけど。

でも、由良の笑顔はどこか無理をしているように見える・・・。

 

「凪?もしかして、もしかせんでも・・・このコか?」

健太郎が、ビックリして由良を眺める。

「あぁ・・・そうだ。」

「そっか〜。ふ〜ん、そうなんや。オマエ、なんて名前なん?」

 

由良の方にむかって、大阪弁を炸裂させた。由良は、いきなりの大阪弁で戸惑っていた。

くくくっ、健太郎の顔だけ見てたら、大阪弁使うように見えないからな〜。

 

「え・・・あぁ。ボクは、坂城 由良。よろしく。」

由良は、丁寧に挨拶をするが、健太郎にはそんなもの通じないに決まってる。

「おう、仲良くしよや〜。オレは健太郎っちゅーねん!しっかし、オマエえらいちっちゃいな〜!!!」

 

・・・・・・・・・やっぱり。

 

「ぷっっ!!あはははは!!!健太郎、オマエやっぱり気が合うなぁ!オレと同じこと、由良に言ってるぞ。」

あまりにも、オレと健太郎の思ったことが一緒だったから、由良には悪いけど・・・ぷぷっ、おもしれ〜。

ふと由良の方を見ると、こっちを向いて睨んでる・・・。

 

あっ、怒ったかな?

 

「凪たちが大きすぎるんだよ!!だいたい何で、凪のグループはみんな背が高いんだ??」

やっぱり・・・怒ってるか。でも、拗ねてるようにしか見えないって。

「由良に言ってなかった?オレら全員、バスケ部だし・・・。」

「そりゃ、大きいはずだよ・・・。」

 

由良がため息交じりでボソッと言う姿が、余計に小さくみえてかわいかった。

えぇ!?

今、オレ・・・由良のことかわいいって・・・。こんな優等生君のことを・・・。

 

・・・・・・・よしっ!気のせいにしとこう!!

 

ガラガラッ・・・・・

 

教室の前のドアが開いて、担任が入ってきた。みんな、バラバラと席に着き始めた。

「ひさしぶりだなぁ、みんな。元気にしてたか〜?」

「うぃ〜〜〜ッス。」

 

クラスのみんなが、やる気なさそうに返事をした。

そりゃ、そうだな。

中学から高校なのにクラス替えもなく、挙句に担任までもが一緒ときた。

女の子でも入ってこればってとこだけど、こればっかしは男子校だからな〜。

 

「高校初日なんだから、もう少し元気そうにしろよ!確かに、中学のころと代わり映えしないメンバーだけど・・・。一人だけ、高校入学の奴がいてるから紹介しとく!坂城〜前に出て来い。」

 

オレの隣りに座っていた由良が、

「はい。」

と返事し、サッと立ち上がって前に出て行った。

「初めまして、坂城 由良です。よろしくお願いします。」

 

深々と頭を下げる由良を見て、微笑むように笑っていたらしく、後ろに座っていた健太郎がニヤニヤしながらボソッと耳打ちしてきた。

 

「由良のこと・・・気になるんか?オマエ、見たこともないような顔してるで〜。」

 

健太郎の奴〜!!キッと睨んで、目で「覚えてろ!」と伝えといた。

健太郎がブツブツ文句を言っていたが、無視して前に向き直した。

 

「坂城、もう座っても良いぞ〜。今日は、委員長と副委員長と各係りを決めたら終わりだからな!!さっさと決めて終わるぞ?」

 

担任の、「これで終わり」の言葉を聞いて、みんなの態度が変わったのは言うまでもない・・・。

 

「センセ〜!オレ、凪が委員長で良いと思うねんけど〜。」

みんな、さっさと終わらしたいのかクラス全員が

「賛成〜。」

と言っていた。

 

今年は、委員長をやるつもりはなかった。

中学3年間やらされて、もう飽きたからだ。

 

なのに・・・な〜の〜に〜!!!

 

「健太郎〜!!!今年は、オレは絶対やらないからな!!!」

「良いやんか〜中学3年間やって来てんから、高校もやっとこうや〜。」

健太郎が勝ち誇ったように笑っている・・・さっきの仕返しってことかっ!?くそっっ。

 

・・・・・・・チョン、チョン。

 

ん??制服が引っぱられてる方を見ると、さっきまで前にいてた由良が目をキラキラさせながら、こっちを向いていた・・・。

 

うっ・・・・・・・まっ、眩しい!!

 

「凪って・・・すごいんだね〜。信頼されてるな〜。頭良いし、背高いし、バスケ部だから運動神経も良いし!!モテモテだろうな。」

 

はぁ・・・どいつもこいつも・・・。

ついでに言うと、ここは男子校だ。

モテモテと言われても、あまり嬉しくない。

 

「おぃ!水無月〜。じゃあ、オマエが委員長な。勝手に相棒の副委員長を決めろ。」

担任の奴まで・・・どうしてオレのクラスは、こんなに適当なんだ?

 

ん?待てよ・・・そっか〜フムフム・・・。

 

「しょうがないな。じゃあ、副委員長は由良!オマエがやれ。巻き添えくらわしてやる!」

 

「えぇ〜!?いやだよ。入ってきたばっかりなのに!!」

 

「大丈夫だって。実はさ、前までは健太郎だったんだけど、あいつ何の役にも立たなくてさ〜。由良なら、真面目そうだし。雑用頼めるし。信頼できるし。何と言っても役に立ちそう!!」

 

「・・・・・はぁ〜分かった。確かに健太郎よりかは、ボクの方が役に立つと思うし・・・。凪が委員長だし、何とかなるでしょ。」

やった!!これで、雑用から逃れられる!

 

けど・・・ここで由良を副委員長にしたことが、これからのオレの身に起こるそもそもの原因だとは知る由もなかった・・・。

 

「ひどいやんけ、由良!凪のアホ〜〜〜〜〜!!!」

 

後ろで健太郎が、叫んでいたが聞こえないフリをした。

 

 

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