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「ん…。んやあぁ……。」

ほとんど眠りに落ちかけていた僕は、口の中で蠢くものに翻弄されて目が覚めた。目を開くと智之さんの顔が目の前にあって、動揺した。

「と…、ととととと…智之さん!?」

「私の事は嫌いかな?」

悲しそうに智之さんが目を下に落とすから、僕は慌てて否定した。

「そっ、そんなことない。」

「ありがとう。」

にっこりと笑った智之さんの笑顔に僕はボーッと見惚れてしまった。ボーッとしてると、また智之さんの顔が近づいてきて薄いけれど柔らかい唇が僕の触れて『チュッ』と音を立てて離れていった。

「翔くん、キスしたのは?」

「…は…初めて……。」

「感想は?」

「ん……、ちょっと気持ち良かった…かも…。」

高校生にもなってキスぐらいもしたことがないかと呆れられるんじゃないかと思ったけど、智之さんは何だか嬉しそうに笑った。

「男の私としても気持ち良かったの?」

「……う、うん……。」

僕って…もしかして変なの?だって智之さんは男の人なのに…。でも、全然嫌じゃなかった。

「じゃあ、これは……?」

パジャマのボタンを上から二つ外されて、パジャマを少し横に広げられた。そこから見える鎖骨に智之さんは唇を寄せて、強く吸った。

「えっ?あ、んっ……。」

唇で吸われた場所がチクッと痛んで、思わず身をよじった。次々とボタンが外され、唇もさがっていく。まだ何の変化も表していない胸の突起を舌で舐められて、こそばゆいようなむずかゆいような気分になった。だんだんと突起が立ち上がっていって、息があがってくる。

「智…之さん、何か……むずむずする…。」

「むずむずするんじゃないよ。翔くんはここを触られて、感じてるんだ。」

「感じて…る?んっ、やぁ……。」

智之さんの手が僕のパジャマを降ろし始めた。それも下着も一緒に。自分でも小さいと分かっているモノをそっと撫でられて、身体中が震えた。最初は撫でるようだったのが、だんだんと手に動きが早くなっていった。

「はっ……や…、ぅんん………。」

「我慢しなくてもいいからね。」

「んっ……あぁっ…、あっ、あっ、……ぁあああっ!」

急に熱が先端に集まったと思ったら、一気に噴出してしまった。智之さんの手のひらはベトベトに汚れてしまった。拭かなくっちゃとティッシュを探すのに顔をキョロキョロさせていると、お尻にぬるっとしたものが触れた。

「えっ?や……なに?」

問いただす前にぬるぬるしている指が蕾に押し込まれた。

「……っ!?」

他人にそんなところを触られたのは初めてで、僕はものすごくパニくってしまう。

「やっ…やだやだ!…やめ、て……。」

首を横に何度もふると、大きな手のひらで抑えられて顔中にキスをされた。

「大丈夫…。怖くないよ…。」

キスをされているところがだんだんと熱を持ってきて、緊張で固くなってしまっていた身体の力が抜けていった。

 

くちゅくちゅ…と音が部屋に響き渡る。でも僕はそれを聞く余裕がないぐらいに智之さんに翻弄されていた。たくさん指を埋め込まれて、息が詰まりそうだった。途切れ途切れに「智之さん。」と名前を呼んでいると、不意に指が全部抜かれて苦しさがなくなった。

「はぁ…、ふ…んぅ……、……っ、ん―――。」

ずっしりと重圧のあるものが入り込んできた。身体が仰け反る。智之さんと身体がすごく密着している。

少しの間動かなかったけれど、僕の息使いが納まった頃、智之さんは少しずつ動きを開始した。その動きが激しくなるにつれ、僕はだんだんと意識を飛ばしていった。

最後に覚えているのは、奥に熱いモノを受け止めた事と、智之さんが「・・・翔。」と僕の事を呼びすてにしたことだった。

 

 

 

 

チャイムの音が部屋中に響き渡って、目が覚めた。僕を抱き込みながら寝ている智之さんから身体をよじってベッドから抜け出す。

腰とお尻が重くズキズキとしたけれど、何とか大丈夫そう。智之さんがすごく優しかったから…。

ちょっと寝癖がついた髪の毛を手で抑えながら受話器を取った。

『はい…。』

チラッと時計を見るとまだ8時で、休みの日に起きるにしては速いような気がする。

『私よ。早く開けて頂戴。』

『…?どちら様ですか?』

『………あんたこそ、誰?智之さんは?』

『まだ…寝てるんですけど。』

なんだろう…。すごく嫌な予感がする。

『起こして。智之さんに話があるのよ。』

『ちょっと……待ってください…。』

受話器をそのままにして、寝室にいる智之さんを起こしに行った。まだ気持ち良さそうに寝ている。

「智之さん。智之さん。」

「うっ……ん………。」

あ、何だか可愛い…。って、そんなこと思ってる場合じゃないや。

「智之さん、起きてください。お客様が来てるんです!」

「ん。…おはよう、翔くん。」

にっこり笑った顔に、僕はドキドキしてしまった。

ベッドから起き上がった智之さんは軽く伸びをして、受話器の方に向かった。

『どちら様ですか?』

『智之さん?私よ、撫子(なでしこ)よ。』

『こんなに朝早くから連絡もなしに来るなんて失礼極まりないですね。1時間ほどしてから出直してください。』

『ちょっと!智之さんっ?』

相手の人の反論も聞かずに、智之さんは受話器をカチャリと置いてしまった。

「いいんですか?」

「気にしなくてもいいよ。また1時間後に来るだろうから。それよりも、着替えて朝ご飯でも食べようか。腰のほうは大丈夫?痛くない?」

「あ……。だ、大丈夫、です。」

智之さんの優しい顔を見ると昨晩のことを思い出して、恥ずかしくてうつむいてしまった。

 

着替えて朝ご飯を食べて、きっちり1時間経ったとき、再びチャイムが鳴った。僕より先に智之さんが玄関に行き、鍵を開けた。

「…撫子さん、何しに来たんですか。」

ドアの向こうから現れた女の人を見て早々に、僕が聞いたことのないような声で智之さんは尋ねた。

「智之さんが最近会ってくれないから私の方から会いに来てあげたのよ?」

 

一体この人と智之さんはどうゆう関係?

昨日、僕は…智之さんに抱かれて…。

 

「婚約者の私に会いに来ないで、こんな子を家に住まわせていたの?」

 

婚約者…?智之さんの…?

じゃあ…僕は、どうして昨日、抱かれた…の…?

 

頭がクラクラして倒れそうだったけど、今倒れたら智之さんに迷惑をかけると思ってさっきまで朝食を食べていたキッチンに引き返した。

撫子さん…と呼ばれた人は何の断りもないまま、リビングに向かった。僕は倒れるのを我慢してお茶を入れてリビングに持っていった。向かい合うように座っている智之さんと撫子さんの前にお茶を置いて部屋に戻ろうとした。

「翔くん。」

呼び止める智之さんの声が聞こえたけれど、その場にいるのが嫌でたまらなくて、聞こえないふりをして部屋に戻りドアを閉めた。

 

 

 

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03/03/04up