5話


 

 

トイレの個室に勢いよく連れ込まれて、狭山は俺の下半身の衣類だけをすべて取り除いた。便器に膝乗りをさせられて壁に手をついて、狭山に後ろを見せるかたちになった。

俺は後ろ向きにさせられて尻を持ち上げられ、自分で触ったことも他人に触られたこともない堅く閉じた蕾の部分に、狭山はいきなり指を突っ込んできた。

 

「いっ……。」

当然入り口で引っかかり、俺は思わず声を出してしまった。条件反射で蕾をますます堅く締め付けてしまう。

「声を出すな。」

狭山は一旦指を取り出して、自分の唾液を指に垂らして、もう一度指を突っ込んできた。

「くっ……うぅ………。」

徐々に入ってくる圧迫感で、俺は息をするのも苦しかった。1本目が入るとゆっくりと広げるようなことをせずに、狭山は2本、3本と次々と増やしていった。3本の狭山の指が俺の蕾を乱暴に広げている。優しさのかけらもなかった。狭山の唾液が指と蕾が擦れるたびに、卑猥な音を出した。

 

乱暴に動いていたはずの指が止まり急に抜かれたが、俺は深く息をつく暇もなかった。

「うあああぁぁぁ………。」

今までの指と比べ物にならないぐらい、太くて熱いものが蕾に差し込まれた。声を出すなと言われていたのに出してしまい、俺はこれ以上出さないようにと下唇を歯でくいしばって耐える。きつく耐えすぎて唇が切れてしまい、口の中に鉄の味が広がった。

後ろから覆い被さるように身体を繋げている狭山の口からは、『未知…、未知……。』と呟く声が俺の耳に入ってきた。

 

身体も苦しくて、胸も苦しくて、すべてが締め付けられているようだった。狭山が未知さんの名前を呼ぶたびに、俺の目からは涙が零れ落ちていた。

そしてそのまま、意識が飛んでいった。

 

 

………………………。

どれくらいの時間が経ったのだろうか?俺が不意に意識を戻したときには狭山はもう居なくて、俺だけがトイレの個室に残されていた。便器の上に下半身裸で座り込んでいた。

トイレのタンクの上に無造作に置かれた下着とズボンを穿こうとして、だるい身体を起した途端、蕾から太腿を伝ってどろっとしたものが流れ落ちてきた。

狭山の精液だった。

 

あいつ、こんなにズタボロな俺をほったらかしにして、一人で帰りやがった。未知さんの代わりで、やるだけの俺には後始末もしてやる価値はないって感じだな。ほんっと、最低な奴。

 

トイレットペーパーで太腿に流れ落ちてきた狭山の精液をふき取って、下着とズボンを穿いてそのまま家に帰った。自転車に乗ったとき、おしりがものすごく痛かった。幸い薄暗くなっていて他の生徒に俺のやつれたような顔を見られることはなかった。

家に着くなり声をかけてきた母親を無視して、俺は風呂場に駆け込んだ。

熱いシャワーを浴びながら、まだ蕾の中に残っている精液を自分の指でかき出した。精液と一緒に赤い液体も混じって出てきた。

狭山が入れた時、蕾が切れたんだな…。そりゃあ自転車に乗ったら痛いはずだ。

自分の身に起きたことなのに、どこか他人事のようだった。

 

その日の晩、俺は熱を出した。

何度も同じ夢を見て、ハッと目を覚す度にトイレに駆け込んで吐いた。夕飯も食べなかった俺の胃の中には何も入ってないから、胃液ばかりが出た。

夢の中で俺は、狭山に『未知』と呼ばれていた。

 

俺は未知さんじゃない。

俺の名前は玲二なんだ。

『未知』なんて呼ばないで。

俺の名前を呼んで。

俺を通して未知さんを見ないで。

俺自身を見て。

 

 

3日間、熱が下がらなかった。やっと熱が下がったと思ったら、土日に入ってしまって俺は暇を持て余していた。学校がなくて狭山に会わなくてもいいのが少し寂しさを覚え、少し安心した。

狭山にあんなにひどいことをされたのに、まだ狭山のことが好きな自分が少しおかしいと思う。確かに合意の上かも知れないけど、あの扱いにはかなりショックだった。

めったに熱を出さない俺を心配して、母親は家でダラダラしている俺を見ても、買い物を頼もうとしなかった。

 

日曜日の昼過ぎ、熱も下がってお尻もある程度痛くなくなって、動かしてなかった身体を少しでも動かそうとして、俺は近くの公園へと出かけた。

いつもなら子供とそのお母さんたちがいっぱいいる公園も、休みの日で家族で遠くに出かけているのか、人気(ひとけ)がなかった。

俺はブランコに座って、ゆっくりと漕ぎながらボーっとしていて、誰かが近づいてくるのに、全く気がつかなかった。ブランコの鎖を手で握られ、緩やかに揺れていたブランコは少し歪んだように揺れて止まった。

「……え?」

いきなりブランコが止まったことにビックリして、俺は鎖を掴んでいる手の先を見た。

「さ…やま…?」

鎖を掴んでいたのは、狭山だった。

 

「ど…して、ここ…に?」

「お前の家に行ったら、ここに居るはずだと教えられた。」

狭山はものすごく怒った…それでいて悲しそうな顔をしていた。

 

俺の家に来てくれたんだ。少しでも俺を心配して?少しでも罪悪感があった?

嬉しくて俺が笑顔になろうとした途端、狭山の一言によって、俺はどん底へと落とされた。

 

「未知の代わりをしてくれるんだろう?」

 

 

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