☆降る夜空１0話
狭山は舌で俺の涙を吸い取っていたと思ったら、急に俺の身体を反転させた。
「わっ…なにっ？……ひゃあぁ。」
後ろの蕾に、ひやっとしてヌルヌルしたものが触れた。
「黙ってろ。」
蕾の周りをぐるりと舐めて、何度かつついた後に少し入れて出してを繰り返した。
「やっ……。」
狭山は舌を使って、唾液を流し込んでくる。気持ち悪かっただけなのが、だんだんと変な感じになってきた。
中で舌を動かされて、微妙な感覚が俺を襲った。
「んっ……ふぇ？」
舌が蕾から離れた後、何だかスースーする。自分の意志とは関係なく何故か蕾の凝縮が繰り返される。
細くてぬるっとしたものが蕾の中に埋め込まれていった。
ぬるっとしたものが指だということが分かったけれど、どうしてぬるぬるしているのかが分からなかった。
「……っ？」
「滑油剤だ。」
何も言ってないのに、狭山は俺の頭の中を見透かしているかのように答えた。俺の身体を心配してくれていることを知って、嬉しくなった。
狭山の一本の指が蕾の中で回るように動かされて、数回出し入れを繰り返した。少しずつ柔らかくなってきている蕾に、２本目を差し込んだ。２本の指は上下左右バラバラに動いて、ぐちゅぐちゅと音を立てた。
「…ひゃぁ…、んん…あっ。」
微妙な動きばかりでもどかしい。後少し奥に…そう思っているのに、狭山はその場所をあえて突かないようにしている。
「んあぅ…、やぁ……。」
じれったい快感のせいで、俺の分身はイきたくてもイけない。狭山のわざと微妙な愛撫に、自ら腰を振ってしまった。
「欲しいか？」
俺は早く奥に欲しくて、必死にコクコクと頷く。
「欲しいなら、頼め。」
「お……願、い…。しんちろ…の、ちょー…だい…。」
狭山はズボンのジッパーを下げて、下着の中から分身を取り出して、指を抜いたとたん挿入を開始した。
「あ…、あ…、あっ…。」
入り口を押し開けて入ってくる圧迫感に、俺は息が詰まりそうだった。何とか息を吸って、出来るだけなじませようと力を抜いた。それを見逃さなかった狭山はゆっくりと入れていたのを、根元まで一気に押し込んできた。
「うああああぁぁあ―――。」
叫びとともに後ろに反り返った俺を、狭山は抱きしめてくれて、分身が俺の蕾に馴染むまで動かないでいてくれた。
「はぁ……、ふっ…んうぅ…。」
馴染んできたら、次はだんだんともどかしくなってきた。狭山に動いて、俺の中をその分身で擦って欲しくて、俺は狭山にキスをした。
「…んっ。…ね。」
けれど狭山は全く動こうとしない。
「や…、だっ……。しんいち…ろぅ…。」
「お前が言葉にして頼むなら、何でもしてやる。」
俺が言うまでさらさら動く気がないらしい…。うぅ…言葉にするのって恥ずかしいのに…。
「うご…、……い…て…ぇ……。」
その言葉を合図に、狭山は出し入れを繰り返し、腰を打ち付けてきた。
パンッ、パンッ…と身体がぶつかる音がする。
「ひあぁっ！…あっ…、ああっ……。」
さっき反転された身体を、今度は元に戻された。狭山と目があってしまい、恥ずかしくて思わず目をそらす。狭山は俺の顎を掴んで、濃厚なキスをかました。
狭山の分身から先走りしている精液で、出し入れするたびに卑猥な音がする。
くちゅり…ぷちゅ…。
空気と液体が交じり合った音が俺の耳に入るたびに、恥ずかしくて何度も蕾に力が入ってしまう。
「くっ…きつ…。おぃ、力抜け…。」
「やぁぁー、も……恥ずかし、い……。」
ますます蕾に力が入って、狭山の分身を締め付ける。狭山はきつい蕾の中で小さく出し入れを繰り返しながらも、俺の分身を掴んで擦り始めた。
「はあぁぁぁぁ……。」
途端に力が抜けていく。狭山は蕾の入り口ギリギリのところまで分身を引いて、一気に押し込めた。
「ひゃあああああぁぁああ！！」
「くぅ…。」
最奥にたどり着いたとき、俺は精液を狭山の上半身に向けて放っていた。俺が射精したときの締め付けで、狭山も勢いよく俺の中に放った。
狭山が俺に微笑んでいるのを見ながら、俺は今日抱かれたのが初めて狭山に抱かれた日にしようと決めた。
俺は蕾から分身を引き抜いた狭山に抱きついて、狭山の唇に軽くキスをした後、鎖骨のくぼみをきつく吸って赤い斑点を残した。俺たちはそのまま抱き合って眠りについた。
この幸せが起きてからも続くようにと祈りながら。
＃
朝になって鳥の鳴き声で目覚めて、隣りに狭山が寝ていたのが本当に嬉しかった。ついつい狭山の寝顔を見つづけてしまって、狭山が目覚めたとき、狭山は少し照れるように怒った。心の底から楽しかった。
意外に料理が得意な狭山が作った、ふわふわオムレツとサラダを２人で食べた。それでもって美味しくて誉めたら、狭山はまた照れたようにそっぽ向いた。
何だか…可愛らしい…ぞ、おい。
一旦家に帰ってから学校に行きたいと言ったら、狭山は「また学校でな。」と言って笑ってくれた。
俺だけの笑顔。絶対に無くさないようにしないとな。
玄関で触れるだけのキスをして、狭山の家を後にした。
ちょっとズキズキするお尻で自転車のサドルに跨りながら漕いで家に帰ると、母親が慌てて俺に近寄ってきた。
「男の子だから大丈夫だと思うけど…。玲ちゃんは可愛いんだから、お母さん心配だったのよ？電話だけでもしてくれれば良かったのに。」
「ごめんごめん。今度からはちゃんとするから。」
母親に少し怒られても、俺は幸せな気分のままだった。
一通りシャワーを浴びて、学校へ行く用意をした。
＃
昨日の俺とは大違いだ。気分爽快で自転車に乗りながらが学校への道を突き進んでいた。口笛を吹きながら流れる風にあたり、今日も一日いいことばかりだといいな…と最近凹んでばかりいた俺にしてはポジティブだった。
けれど、浮かれすぎていたのかも知れない。幸せすぎて周りが見えてなかったのかも知れない。
信号のない十字路を渡ろうとしたとき、右の道から大型トラックが飛び出してきた。トラックはキキキキキ―――っと勢いよくブレーキをかけたが、スピードを出していたため、すぐには止まらなかった。
間に合わない！！！
トラックとの衝突は免れなかった。俺は自転車ごとはねられて、宙に浮いた。浮いてすぐ落ちたんだろうけど、俺自身、あたかもスローモーションのようにゆっくりと身体が舞い上がって地面に叩きつけられた。
俺…死んじゃうのかな…。いやだなぁ。せっかく、狭山と心が通じ合ったのにな。これから狭山と一緒に生きる予定だったのに。
狭山の奴、俺のこと心配してくれるかな？俺が死んだら悲しんでくれるかな？悲しくて泣いてくれるかな？
まだ死にたくない。死にたくないよ…。