−強く儚い者たち−

<5>

 

駅から学校までの道のりが、すごく長く感じる…。

よりによって、駅から学校までが上り坂だなんて。

 

遠くから学校の校舎の門が見えた。

潤一郎が門に近づくにつれ、いくつかの人影が門の前に立っているのが見える。

柔道部員と思われる奴らが立っていた。

潤一郎は走っていた足を止め、ゆっくりと歩きながら柔道部員に近づいた。

 

「そこを退け。」

 

今まで聞いたこともないくらい、潤一郎の声は低かった。

 

「みっちゃ……佐伯…充弘を、どこにやった!?」

 

「佐伯なら、美術室にいるぜ?ただし…氏原先輩と一緒だがな。」

 

ニヤニヤと笑っている柔道部員の一人が、潤一郎に近づいた。

 

「美術室に行きたいのなら、俺らの相手してもらわないとなぁ〜。…ウッ…ガハッ………。」

 

柔道部員の調子に乗っていた声からは、うめき声が聞こえた。

潤一郎の腕tが相手の腹に、みごとにくい込んでいた。

 

「これでいいのか?さっさと残りの4人も来るんだな。」

 

4人に囲まれても前後左右からの攻撃も、今の潤一郎にとっては何の恐怖もなかった。

ただ…ひたすら充弘のことしか考えていなかった。

潤一郎は飛んでくる拳をスレスレで避けながら、1人、2人を地面に倒していった。

 

が、さすがに1人では4人もの相手をするにはきつかった。

潤一郎は前の1人に気を取られている隙に、後ろで倒れていた柔道部員が起き上がってくるのに気付かなかった。

その後ろの柔道部員はポケットに手を突っ込んで、光る物を取り出した。

 

――― サバイバルナイフだった。

 

ゆっくりと背後から潤一郎に近づく柔道部員の顔は、怒りに満ちていた。

それでもまだ潤一郎は気付かない。

潤一郎とナイフを持つ柔道部員の距離が1mを切ったときだった。

 

不意に後ろを振り返る潤一郎。

目には光っているナイフが写る。

 

この体勢からじゃ、避けきれない!!

 

潤一郎が身構えた瞬間、ナイフを持った柔道部員が横へ吹っ飛んだ。

手からナイフが離れて、地面に叩きつけられる柔道部員。

一瞬固まっていたかも知れない。

慌てて吹っ飛んだ方向と反対の方を見ると……そこには、生徒会長の一史と、さっき電話してきた新聞部長の理が立っていた。

 

 

「おいこら、潤一郎!人の話は最後まで聞けよ!さっさと電話切りやがって…。」

 

ふてくされた顔で潤一郎を睨みながら文句を言ってきたのは、理だった。

その横で苦笑いをしながら理をなだめているのは、一史だった。

理から充弘が学校にいるかも知れないと聞いたのにも関わらず、潤一郎は『何でここに2人がいるんだ?』と考えていた。

 

「おい理、その話は後でだよ。潤一郎、ここは俺らが片付けておくから、お前はさっさと佐伯のところへ行け!!」

 

いきなりの登場人物にあっけにとられていた潤一郎だったが、一史の言った言葉『佐伯のところへ行け』に反応して、一史を見据えた。

 

「さんきゅ。」

 

何も言わずに頷く一史に、短い感謝の気持ちを述べて、潤一郎は校舎へ向って走り出した。

潤一郎を見て、後を追おうとする残った柔道部員たち…。

その前に、一史と理が立ちはだかった。

 

「お前らの相手は、俺らがする。」

 

見るからに短気で喧嘩っ早い理生と、徒会長という仮面を被った一史。

柔道部員たちが、この2人に勝てるはずもなかった。

 

 

.。・:*:・`☆、。・

 

 

氏原はそんな部員たちのことを知る由もなく、充弘だけに目がいっていた。

やはり…その目は正気ではなかった。

 

 

氏原の指がゆっくりと充弘の頬から顎にかけて、舐めるように滑っていく。

充弘にとってその行為は、全身に鳥肌が立つ寒気以外の何者でもなかった。

 

破られたシャツから覗いている充弘の胸の突起を、氏原は自分の唇を舌で濡らしながら胸の突起を口に含んだ。

充弘は出してしまいそうな声を、唇を噛んで耐えていた。

あまりにもきつく噛んでいたため、充弘の唇から顎にかけて一滴の赤い血が流れ落ちる。

 

「そんなに食い縛ってたら、唇切れるぞ。声を出せっ。色っぽくて、俺の息子を元気にするような声をなぁ!」

 

氏原は顔を上げて食い縛っている充弘にそう叫ぶと、また充弘の胸の突起を口に含み、少しずつ堅くなっていくのを楽しみながら、胸の突起を舌で転がした。

それでも充弘は、必死に唇を噛んだ。

 

僕なんて死んでしまえばいい…。

そう思った…。

けれど…こいつの言いなりには、なりたくない。

 

 

「どうしても声を出さないつもりだったら…こうするしかないなぁ。」

 

氏原はニヤニヤと笑いながら、充弘のベルトを緩めだした。

ベルトの金属音が美術室に響き渡る。

 

「なっ…やめろっ……」

 

慌てて起き上がろうとする充弘の身体を、氏原は片手で床に押さえつけて、もう片方の手でズボンとトランクスを一緒に引きずり下ろした。

 

「いやだっ!!……う゛……ぁあっ………」

 

外の空気に晒された充弘のものを、氏原は手で握り締めていた。

ゆるくでもなく、きつくでもなく、刺激を与えるような握り締め方をしていた。

そして、少しきつく掴みながら抜き始めた。

 

「……うぅ゛…んっ……、はっ…離せぇ……」

 

「そうそう…その声だ。もっと…もっと聞かせろよ。もっと俺を楽しませてくれ!!」

 

充弘のものを握り締めたままで、氏原は笑いつづけた。

その言葉を聞いて、充弘からは血の気が失っていた。

それでもなお、顔に変化はなかった。

けれど、充弘の頭の中は恐怖が渦巻いていた。

 

潤一郎、潤一郎、じゅんいちろう、ジュンイチロウ。

お願い、僕を見捨てないで。

僕には、潤一郎しかいてないんだ。

 

ジュンイチロウが……スキなんだ。

 

こんな時に、初めて気付かされた自分の気持ち。

こんな時に………。

もう、遅いんだ。

もう…僕はこいつに犯されてしまうのだから…。

大好きな潤一郎じゃなく、狂ってしまっている目の前の男に!!

 

 

「ほらっ…ほらっ…どうだ?してもらってるってのは、気持ちいいだろう?後で…もっと気持ち良くさせてやるよ!」

 

「はぁ……っあ…、やめ……ん……」

 

もう声も出ない。

抵抗も出来ない。

 

――限界だった。

 

「やっ……ぁあっ……あああぁぁぁぁぁっ。」

 

好きでもない男の手によって、充弘は解き放ってしまった。

 

 

 

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