幼なじみ(4)

 

 

 

「オレは、猛の・・・顔も、中身も、すべて好きだから・・・。

猛の笑った時の顔が好きだ。ちょっとした時の優しさが好きだ。

それでも・・・猛は自分自身が嫌いなのか?

猛そのものが好きだって言ってる奴を無視して・・・無視してまでも自分のことイヤか!?」

 

オレは・・・精一杯の今の気持ちを伝えたつもりだった。

けど・・・・・・肝心なことを忘れていた。

猛は小さいころ・・・ニブイ奴だったということだ。

 

「雅くん、ありがとう。何だか自分が少し好きになったよ。ボクのこと・・・本当に大事な友達だって思っててくれてることが伝わった。」

 

――――― 友達・・・―――――

 

 

そう・・・

思ったとおりオレの気持ちは、全く猛に伝わっていなかった・・・。

まぁ・・・男から好きって言われても、普通はそんな意味で取らないか。

 

“こうなったら絶対猛を手に入れてみせるからなっ!!”っと笑顔の猛を横目に、意気込みを入れているのだった。

 

でも・・・次に告白する勇気はないかもしれない。

男が男に告白なんて・・・そうそう出来るものじゃない。

オレは猛が絡むと・・・弱くなる気がする。

 

これからどうなるんだろう・・・。

 

 

大学での猛との生活は、とても楽しい。

他にも友達と呼べる奴はいっぱい出来たけど・・・友達って意味でも好きな人って意味でも1番は猛なんだ。

猛とは同じ学部だし、取る講義はほぼ一緒だった。

 

・・・ただ、水曜日だけは別々で、1日会えない日だった・・・。

 

週に1回は猛の家へ行って・・・ダラダラと遊んでみたり、飯作ってやってみたりしてたんだ。

でも・・・そろそろ、我慢の限界がきてるみたいだ。

 

2人一緒にいると、猛に抱いて欲しくて体の中心が疼いてくる・・・。

やっぱり好きな人と二人っきりだと・・・一応オレも男だから猛に欲情()してるんだろうなって思う。

どんなけ猛を襲ってしまったら楽だろうって思う・・・。

 

いつか・・・やってしまうかも知れない。

オレ自身に歯止めが効かなくなったら・・・・・。

でも、オレって「受け」側なのに・・・オレが襲うって可笑しな話かも知れない。

普通はオレじゃなくて猛が襲うんだったら分かるけど・・・それは絶対ないだろうな。

 

 * * * * * *

 

水曜日・・・

 

この日は猛と会えない日にも関わらず、大学の食堂でばったり会った。

オレの周りには猛とも仲の良い男友達や女友達だったのに、猛はオレの知らない女の子と2人だった。

 

誰だ・・・?

 

オレは、そんな女の子知らない・・・。

その女の子は一体誰なんだ?

 

オレの頭の中で・・・・こんなみんながいてるところで、猛に聞きたくても聞けない言葉がグルグルと回っている。

今すぐ猛を連れ出して、あの子の事を聞きたかった。

 

でも、聞く勇気がなかった。

 

 

オレは・・・・・他の事や他の奴らの事なら先を読むことぐらい簡単なことなんだ。

そんな便利な頭も猛のことになると、働きがおかしくなるみたいだな・・・。

頭の回転が鈍くなって・・・聞くことすら出来なくなる。

 

「雅くん、水曜日に会うなんて珍しいね。大学入ってから1度も会わなかったのに。」

猛は少し動揺しているオレに気づかず、いつもと変わらない笑顔で話し掛けてくる。

 

今のオレには、その笑顔が苦しかった。

オレの知らない女の子と一緒にいるのに・・・猛は何も言ってこない。

このまま猛と話していると、頭の回路が停止しそうな勢いだった。

 

「水曜日に会うのは・・・初めてだな。・・・・・オレら次の講義もあるから、早く食べないと間に合わないんだ。じゃあな、猛。」

 

本当はそんなに大事な講義じゃないから、少しぐらい遅れたってどうってことない。

いつもだったら猛ともっと話してただろうけど、猛がオレの知らない女の子と2人でいるところなんて見たくない。

 

一刻も早く、その場を離れたかった。

そうでないと・・・何を言ってしまうか分からなくて、怖かったんだ。

 

そんなオレの様子に、猛の方も少しおかしいと気づいたのか首を傾げていたが・・・一緒にいた女の子に何か言われて、

「じゃあね、雅くん。」

それだけ言うと、2人でどっか行ってしまった。

 

 

オレらの集団は食堂で食べて、出ても出なくても良い3限目の教室に向かった。

 

「なぁ・・・雅。ちょっと話したいことがあるんだけど。」

猛を除いて今の所大学で1番仲が良い、小橋 祐希が耳打ちしてきた。

 

「じゃあ3限目サボって、あそこの日陰があるベンチででも良いか?」

チラッと目についたところが、少し遠くに見える心地よさそうなベンチだった。

 

他の仲間に代返を頼んでから、オレと祐希は人があまり来なさそうな・・・話をするにはもってこいのベンチに座った。

 

祐希の言いたいことは、だいたい分かっているんだよな。

 

さっきの猛のこと。

オレと猛の関係。

 

後は・・・祐希の気持ちもくるかな?

 

 

祐希の気持ち・・・前から感ずいてはいたんだけど、祐希本人の方から何も言ってこないから知らないふりをしてたけど・・・。

 

とりあえず、祐希の第一声は・・・

 

“猛とは恋人同士じゃなかったのか!?”

 

 

って気がする。

 

 

 

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