幼なじみ2(1)
あの日の出来事から、2ヶ月が経った・・・。
大学は夏休みに入っている。
けど、その休みも・・・後1週間で終わる。
大学が始まってしまう。
オレは、どうしたら良いんだろう。
オレは・・・。
オレは・・・オレの居場所は、どこなんだろう。
夏休みの間、猛には1度も会っていない。
それどころか、あの日から顔も見ていない。
オレは猛を避けて、猛はオレを避けている・・・。
お互い逃げ回っている。
祐希が友達から聞いた情報によると、猛はあの時の女の子と付き合っているようだった・・・。
女の子の名前は・・・知らない。
知りたくもない。
オレは、あの日以来、たまに祐希が遊びに誘う以外、部屋の中に閉じこもりがちになった。
母親は、何も言ってこない。
オレと猛の間に何があったのかは知らないが、何となく分かるんだろう。
今のオレには、何も言われないのがありがたかった。
少し痩せた気がする。
「雅・・・もうすぐ大学始まるけど、行けるか?」
この日も、祐希に外に連れ出されて、大学の近くのカフェにいた。
本当に祐希は、優しい。
何も聞かないで、そばにいてくれる。
祐希といると・・・ほっとする。
何で祐希のことを、好きにならなかったんだろう。
そうすれば、猛とも友達のままで、過ごせたかも知れなかったのに。
「行かないとダメだろう?夏休みも、もう終わるな。今年の夏休みは、いい思い出なんて、一つも残らなかった・・・。オレは・・・。」
今日まで、あの日のことを祐希には話していなかった。
けど・・・今なら、聞いて欲しい・・・・。
「オレは・・・猛に抱いてもらえば、ただそれだけで満足だと思った。だから、あの日、祐希から貰った薬を使ったんだ。そして・・・抱かれた。・・・・・その一瞬が満足だったのは、確かだったんだ。そう・・・一瞬だけ。後からは、虚しさが残っただけだった。」
少しずつ話すオレの言葉に、祐希は静かに聞いていてくれた。
「雅・・・虚しさが残るんだったら、ウソでも良いから・・・オレと付き合わないか?少しは、気が紛れて良いかもしれない。」
祐希の目は、オレをまっすぐに見つめている。
目が離せなかった。
強い祐希の眼差し。
オレの心は、揺れていた。
こんな弱っているときに言うなんて・・・祐希はズルイ。
でも・・・すごい嬉しかった。
「祐希は、それで良いのか?オレは・・・まだ猛のことが好きなんだぞ?祐希に甘えることになる。」
「それでも良いんだ。オレは雅の役に立ちたいんだ。」
「・・・・・・・。さんきゅ・・・。大学でも、甘えることになるけど・・・。」
最後まで遠慮するオレに、祐希は微笑んでオレを包み込んだ。
店の中の人たちが、ざわめきだすのが耳に入ってくる。
あったかい・・・。
祐希の体温が、抱き合ってるだけで伝わってくる。
ありがとう、祐希。
オレ・・・大丈夫。
祐希がいてくれるから・・・。
店のざわめきが気にならなくなるほど、祐希はオレをしっかりと抱きしめてくれた。
* * * * * *
そして・・・大学の、後期が始まった。
夏休みの間、見なくてもよかった猛の姿が目に入る。
同じグループにいるのだから、当たり前だけど・・・。
大学が始まって、何日かしてから猛の話が出てきた。
グループの友達は、オレと猛が仲良かったのに、全然話さないのをみて、気をつかっていたけど・・・口を滑らしたかのように、話題がでた。
「なぁなぁ・・・聞いたか?猛の奴、2・3日前に彼女と別れたらしいぜ。」
同じグループの友達が、話し掛けてきたのだ。
「えっ・・・!?そうなんだ。知らなかった・・・。」
祐希から聞かされた話は、夏休み入ると同時の話だったから・・・。
もう、別れたんだ・・・。
あんなにオレに似ててって・・・、安心するって・・・・。
オレがどんな気持ちでいたか。
猛は分かってないんだ・・・。
猛の視線を感じるようになったのは、それからだった。