ビジネスライク(7)
−布施 秋久−
店の中は俺と枚方以外に2グループいるだけで、席は好きなところに座れた。まだ少し早い時間だから、込んできてはいないのだろう。
「枚方、何にするんだ?」
「はぁ、あの…ジントニックで…。」
店員を呼んで、ジントニックと俺の赤ワインを頼む。枚方は違和感があるのか店の中をキョロキョロと見回していた。
「何か珍しいものでもあるのか?」
「いえ、ただバーみたいなところに入るのが初めてなので…、ちょっと、高そうだなぁ…と。」
「そんなこと思っていたのか。心配するな。今日は奢りだ。」
すぐに赤ワインとジントニックが運ばれてきた。小さく乾杯をして、ゆっくりと飲み始めた。枚方はジントニックを半分ほど飲んだだけで、頬が赤らんでいる。
酔いやすいのだろう。バーのカクテルはそこらの居酒屋と違って、酒がきついから余計にだな。しかし……、少し酔っぱらった枚方は、いつもの可愛さに増して色気まであるじゃないか。他の奴らには見せたくないな。
「布施さーん。俺を飲みに誘ってよかったんですかー?」
枚方は2杯目のカシスオレンジを飲み終わるところだった。目が泳いでるから、かなり酔っている。
「なんでだ?」
「だって……、京橋さんがいるのに…。」
話の内容が読めない。どうして京橋がいるから飲みに誘ったら駄目なんだ?
カシスオレンジを飲み干した枚方は、もうデロンデロンの状態だった。帰そうにも一人で家に帰れるような状態じゃない。今日は携帯の番号を聞くだけでも十分だと思ったんだが…。俺の家に連れて帰って、俺が理性を保てるかどうかが心配だな。いくら好きだからと言って、酒に酔ってる奴を抱くような趣味は持ち合わせてはいない。
半分寝かけの枚方を肩に抱えてバーを出て、俺の家に向かった。ここから家までは5分ぐらいだからタクシーを使わなくても歩いていける距離だ。枚方も軽くて、しんどい思いをしなかった。
住んでいるマンションにたどり着き、エレベーターで俺の部屋に向かっている最中、枚方は寝言らしきものを言っていたが聞き取れなかった。ドアを開けてその先にあるリビングのソファへと枚方を寝かせ、一息をつくためにネクタイを外して、酔いを覚ますためにこーひーを入れた。
コーヒーを飲みながら枚方を起こそうか、そのまま寝かしてやろうかと迷っていると、枚方は「んん―――。」と唸った後に、目を覚ました。
「ここどこぉー?」
寝ぼけているのか、まだ酔いが残っているのか、ぼへぇ…としている。
「俺の部屋だ。」
「布施しゃんのおへやぁ?」
「そうだ。」
「あははははー。うそだぁ。布施しゃんが俺なんか部屋に入れるはずないじゃーん。ねぇー。」
まったく酔いが覚めた様子がないな。
「何でそう思うんだ?」
「だってぇ、布施しゃんは、きょーばししゃんと付き合ってるから。ねー。………あれぇ?そっかぁ…付き合ってんだぁ。」
自分で言ったのに、自分で納得してる…。と言うか、俺と京橋が付き合っているなんて、何を勘違いしているんだ?
「付き合ってないぞ。」
「うそつきっ!付き合ってるって言ったもん!」
「誰がだ?」
「きょーばしさんが。……布施しゃん、どうして嘘つくのぉ?ひどいよぉ…。…ひっく…。うっ……うえぇぇぇぇん。」
「おっ、おい。」
急に泣き出した枚方をなだめようと抱きしめて、頭をゆっくりと優しく撫でてやる。
「いいか?京橋が言っていることが嘘だ。俺は今、誰とも付き合っていない。」
だんだんと枚方の泣き声が止んでいく。潤んだ目で俺を見て、「ホント?」と言った。俺の理性は、もうないも同然だった。枚方が可愛すぎる。これで襲うなというほうが無理だ。
「俺、布施さんが好き…。」
見つめられて、好きと言われて、もう止められなかった。
「俺も好きだよ。」
赤く潤っている唇に触れるようなキスを落とす。何度も啄ばむようなキスを繰り返し、薄く開いた唇の間にそっと舌を滑り込ませた。舌と舌が触れ合った瞬間、枚方はビクッとして一旦舌が離れたが、恐る恐る絡めてきた。それに深く答えてやる。
「ふっ……んん。」
鼻から突き抜けるような声がキスの合間に漏れる。俺と枚方の合わさった唇の間からは、いっぱいになったお互いの唾液が溢れ出して、枚方の顎を伝っていく。
枚方のワイシャツのボタンを素早くはずし、下から出てきた肌に手を滑らした。吸い付くように手が肌に触れ合う。すでに小さくしこりになっている突起に両手を伸ばし、撫でたり摘んだりしながら弄ぶ。びくんっびくんっと時折、枚方の体が震えた。唇を少しずつずらしていき、首筋や鎖骨へと自分の刻印を残していく。
唇が胸の突起にたどり着いたと同時に右手を下へと降ろして、下着の中に手を滑り込ませた。
「もう、大きくなっているんだな。」
すでにもたげている枚方のモノを下着の外に出した。
「いやぁ……。見ない…でぇ…。」
軽く手を上下に動かしてやると、枚方のモノの先端からは白い密が溢れ出してきた。
「んんっ…、ん、んっ…。」
「声を我慢するな。」
必死に食い縛って声を出さないようにしている枚方の口に、俺は人差し指を入れて、食い縛れないようにした。
「あっ、ああっ……、んああっ……。」
蜜を吸い取るように、俺は枚方のモノを口に含んだ。
「やぁあ……。きたな、い…。んんあっ。」
枚方は横に嫌々と首を振って、俺の人差し指をいつの間にか口から外していた。一度口を離して、泉の言葉に答えてやる。
「汚くないさ。俺がこうしてやりたいんだから。枚方が……泉が、好きだから。」
「んっ…あ、あぁっ…。あああぁぁぁ―――。…はぁ、…はぁ、ご、ごめんなさい…。」
泉と呼んだ途端にビクンと身体をしならせて、白い密をたくさん噴出した。
「泉って呼ばれると感じるのか?」
「やぁぁん。」
泉の顔を覗き込むと、真っ赤になって横を向いてしまった。
「ごめんなさいってどうゆうことだ?」
「だって……布施さ、んの……、顔にかけた…から…。」
「少し舐めたけど、泉のは美味しかった。」
ますます泉の顔が真っ赤になってしまった。