10万HIT記念小説

 

 

eautiful ife

 -4-

 

 

 

夕食会と称した商談もなかなか弾んで、いい感じでまとまった。

「では、よろしくお願いします。」

「こちらこそ。」

椅子から立ち上がってお互い握手を交わす。

「話も終わったので、私は仕事が残っているので帰らせてもらいます。佐和子はまだいるので良永さん、お相手お願いできますか?」

やっぱりそうきたか。この後、娘に付き合えと言われるとは思っていたんだ。だから滸をつれてきたんだがな。

「申し訳ありません。私の方も秘書の時枝と会議の打ち合わせが残っていますので、社の方に戻らなければならないのですよ。佐和子さんには申し訳ないのですが、今日は乾社長と一緒にお帰りお願いできますか?」

にっこりと…でも反論できない笑顔で娘に言い切った。

「そうですか…。それは残念ですわ。お仕事、頑張って下さいね。」

「ありがとうございます。では…。」

お互いに挨拶をして、その場で別れた。

 

「社長、会社に戻られるのですか?」

「そんなわけないだろう。今日はもう帰るさ。あれは誘いを断る口実に決まってる。」

「では、私を近くの駅で降ろしていただけますか?」

今、私が運転している車は自分のだ。このまま帰るつもりだったから自分の車に滸を乗せてきた。もちろんこのまま滸を返すわけがない。

「飲み足らない。滸、私の部屋で飲みなおさないか?」

「遠慮します。」

「そんなこと言うな。断られても連れていくだけだがな。」

滸の方をニヤリと見て、すぐに前に視線を戻した。滸の耳が少し赤くなっているのに気付いて、視線を戻してからも顔が緩んでしまっていた。

 

 

「お邪魔します。」

玄関で靴をそろえてから部屋に上がる滸を見て、その礼儀正しさに微笑ましくなってしまう。キッチンからワインとグラスを持って先にリビングに通した滸の元に向かった。

「滸も少しぐらいは飲むだろう?」

「……少しだけ…。」

カチンとグラスがぶつかり合う音がする。

最初のうちは会社の話ばかりだった。そのうちだんだんとお互いに酔い始めていた。話も仕事のことから逸れていき、私はあの日のことを持ち出した。

「このワイン、美味しい。」

頬を赤く染めた滸の口調は、とても柔らかくなっていた。

「それは良かった。滸がここに来た時のために買っておいたんだ。それより、滸。」

「なーに?」

首をかしげて問い掛けてくる姿は、フェロモンがふわふわと漂っていた。思わず押し倒しそうになってしまうのを、全理性を持ち出して何とか耐えた。

「ど、どうして、あの日、先に帰ってしまったんだ?朝起きたら滸がいなくて、とても寂しくなったんだが。」

「だって………。」

「だって?」

「……………恥ずかしかったんだもん。」

少し拗ねたように唇を尖らせた滸に、勝手に唇が吸い寄せられていった。ちう…と音を立てて、すぐに離した。

「恥ずかしかったから、私が起きる前に帰ったんだ?」

「………うん。」

「じゃあ…抱かれたのが嫌…とかじゃなくて?」

「………うん。」

少し酔って幼くなっている滸は殺人的な可愛さだった。私の理性もぶち切れてしまいそうな勢いだ。けれどもう少し聞くことがある。それまでは我慢…。我慢…。

 

 

 

BACK    10万企画部屋    NEXT

 

03/04/02up