10万HIT記念小説
Beautiful Life
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ズルッという音とともにペニスを引き抜くと、グッタリしている滸の蕾から精液を掻き出して綺麗にしてやった。とりあえずパジャマを着て濡れタオルをバスルームに取りにいって部屋に戻ると、滸は小さく寝息を立てながら寝てしまっていた。寝ている時の幼い笑顔を見て、微笑ましくなってしまった。身体をそっと拭いてやり、私の使っていないパジャマを着せてやる。
滸をソファの上に移動させてベッドのシーツを取り替えた。綺麗なシーツの上に寝かし、そっと滸を抱きしめながら私も眠りについた。
朝起きると、滸は影も形もなく居なくなっていた。綺麗にパジャマはたたまれて、ソファの上に置かれていた。
その日から出来る限り探したが、全く見付からなかった。3ヶ月間探して、もうそろそろ駄目かと諦めかけた時だった。秘書の依頼をしていた派遣会社から、私の会社に滸がやってきた。
嬉しくなったのも束の間、滸は冷徹な秘書になっていた。あの時のことを話し掛けても、全く相手にされなかった。
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「昼からの予定は?」
書類をしぶしぶ片付けながらも、必要なことはしっかりと聞く。やることはちゃんとやるのだ。そうしなければ、あっという間に会社など潰れてしまう。
社長室の私の机の斜め前に滸の机も用意してある。滸は側に置いてあった手帳を持ち上げめくっていき、予定の書いてある場所で止まった。
「この後、14時から第一会議室で定例会議です。18時からは帝都グランドホテルの最上階で、イー・エム・シーの乾(いぬい)社長と夕食会です。」
イー・エム・シーと聞いて、私は滸に幸せが逃げると言われたのにもかかわらず、また深く溜息をついてしまった。
「また娘を連れてくるのだろうな…。」
社長はとてもいい人なのだが、毎回会食に自分の娘を連れてい来るのだ。私と交際するのを期待しているのだろうが、あいにく私は女に全く興味がない。正真正銘のゲイだからな。
娘の方も嫌がっていないから困る。大事な取引相手だから、無下に断るわけにもいかないから大変なのだ。
「滸。」
「今は職務中です。」
名を呼ぶと、滸は自分の書類に目を向けたまま言い切った。
「仕事が終わったら、名前で呼んでも良いのか?」
「あいにく私と社長は名前で呼び合うほどの仲でもありませんので、お断りいたします。」
きっぱりさっぱり切り落とされた気分だ。秘書だから当たり前なのだろうが、どうにも隙がない。仕事のパートナーとしてはありがたいが、親密になりたい時には大変だな…。
「滸、今日の予定は?」
それでも諦めずに名前で呼ぶ。
胡散臭い目つきで、滸は私を見た。
「は…?何を言っているのですか?予定は先ほど申し上げたとおりですが。」
「違う。滸の予定を聞いているのだ。」
「そうでしたら、ちゃんと主語と述語を並べてください。私は社長とご一緒に定例会議に出席にした後、社長の溜め込んでいる書類の片付けをして終わりです。社長の夕食会には会社の前に車を用意しておきますので、定例会議が終わり次第向かってください。」
『溜め込んでいる』の部分を少しきつめに言われて、うっ…と喉が詰まる。言い訳に聞こえるが、秘書の滸が片付ける事が出来る書類をわざわざ私のところに持ってくる必要はないだろうが。そんなことで私の時間を割きたくないだけだ。
私は社長の権限を使った。
「今日の夕食会に滸もついて来い。一人ぐらい増えても構わんだろ。」
「ですが……。」
「何か予定でもあるのか?」
「…いえ。」
「なら、ついて来い。残業代として出してやる。」
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10分ほど早めに来ていた私たちは、すでに30分ほど待たされていた。
「もう20分も遅刻じゃないか。どうせ娘の用意に時間でもかかってるんだろう。」
「だるそうな顔をしないで下さい。ついて来ている私がそのような顔をしたいぐらいですよ。」
嫌そうな顔をしていると、隣りの席で滸は横目で私を睨んできた。そんな綺麗な顔で睨まれても、全然怖くない。
「すみません、良永社長。娘の佐和子(さわこ)がなかなか用意が終わらなくて…。」
日照っている額の汗をハンカチで拭いながら、隣りに着飾った娘を連れてイー・エム・シーの社長がやってきた。
「いえ…。私どもも今来た所ですので。」
「そうですか。それは良かった。」
嘘に決まってるだろーが。
「すみません。私のせいで遅れてしまって。お詫びは近々させて頂きますわ。」
「本当に気にしないで下さい。さ、座ってください。」
お詫びと言って呼び出されるのは分かっている。とてもじゃないが、そんなことは勘弁して欲しい。甘ったるい香水を嗅ぎながら一日付き合うなんて事は出来ないからな。
それなら滸の匂いの方がいい匂いだ…。特にあの最中の………って!おい!
あの時のことを思い出しそうになって、慌てて気を引き締めた。
03/03/29up