Over Drive -人生山あり谷あり-
やっとのことで、山奥の旅館に着いたときには、バスの中は壮絶なことになっていた。とんでもない山道だったおかげで、お菓子はあちらこちらに飛び散ってるし、ほとんどのものはバスに酔ってぐったりしている。
バスとか車とか乗り物酔いをしたことのない俺でも、ちょっと気持ち悪い…。信じらんねぇ。あの山道をもろともせずに突き進む運転手は絶対おかしいって!
さっさとバスを降りて、部屋でゆっくり休みたい。
「生徒たちはバスから降りて部屋に荷物を置いたら、旅館の3階にある大広場に集まれよ――。」
各クラスの担任たちが俺らに叫んでいる。ふざけてる。先生、あんたは酔わないのか?あぁそうか、もう何年も乗ってたら慣れるよな。
「都姫ちゃん、大丈夫なの?私、心配だから部屋まで一緒に行こうかしら?きゃvv」
バスから降りて真尋と一緒に旅館に入ろうとしている俺に、恐怖のオカマ声が聞こえてきた。
「あっち行け。」
「まっ、ひどいわねー。心配してるだけなのに。」
「お前が部屋に来ると、襲われそうだからな。」
「まっ、するどいわね。」
「本当に襲うきなのかよっ!」
思わずツッコミを入れてしまった。何だかんだ言っても、いつもこいつに乗せられているような気がする…。
「真尋、こいつを無視して行くぞ!」
「僕は何も言ってないけど。都姫が相手してるんだけどねー。」
「うるさい。」
これ以上言っても俺が不利になるだけかも…と思って、さっさと決められた部屋に向かった。
部屋は6階和室で、4人部屋にしてはなかなか広かった。窓からは遠くの町が綺麗に見える。夜に見たら夜景も綺麗なはずだ。
俺は自分の陣地を確保して、持ってきた荷物を出し始めた。1泊二日だから、あんまり持ってくるもんもないよなぁ。
ゴソゴソと荷物を探っていると、扉が開いて真尋が入ってきた。その後に続いて同じ部屋の2人も入ってくる。そのうちの1人は、寮でも同室の相川次郎(あいかわじろう)だ。
「都姫、置いていかないでよ。帝都さんの相手するの大変だったんだからね!」
「あんなオカマ野郎の青龍なんかほっといて、さっさと部屋に来ればよかったんだよ。」
「そんなわけには……。」
俺の横に荷物を置いて、真尋も自分の荷物を出し始めた。横でそれを見てると、真尋の鞄からは意味不明な物がいっぱい出てくる。
まくら、ざぶとん、スリッパ、ぬいぐるみ、………?
「なぁ、真尋。何でぬいぐるみなんだ?」
「美王が俺だと思って一緒に寝ろってくれたんだよ?」
「え゛……、マジ?」
俺の荷物を探っている手が止まる。俺と真尋の会話を聞いていた2人の動きも止まった。
美王って…あの、真尋の彼氏の、生徒会長のことだよな?
俺は次郎や残りの一人と目をあわせて、同時に頷いた。
“聞かなかったことにしよう。”
暗黙の了解だった。
俺らは荷物の整理も適当に終わらせて、担任に言われていたとおり、大広場に向かった。他の部屋の生徒たちもぞろぞろと大広場に向かい始めているみたいだな。一体、何があるんだ?
大広場に着いて中に入ると、そこにはほぼ全部のクラスの生徒が集まっていた。真尋と二人で適当な場所に座っていると、斜め後ろから異様な気配を感じた。チラッとそっちの方向を見ると、青龍がニコニコと手を振っている。そりゃ、気配感じるはずだ。
無視して前を向くと、先生たちが説明を始める所だった。
「今から宝探しクイズを始めるからな〜。旅館を出て、校庭を挟んで向かいにある学校を借りてある。そこに問題が書かれたプレートを探し出して、ここに戻ってきて答えた者から一抜けだ。ちなみに1位は『何でも券』5枚、後、1位以下50位までは今日の夕飯が『豪華食事』になる。」
「せんせ〜。『何でも券』って何スか〜?」
絶対ほどんどの生徒が疑問に思っていただろう質問を誰かがした。先生たちは何やら含み笑いをしている。
「この『何でも券』ってのは、簡単に言えば、何でもありだ。ただし、学校内だけだがな。授業をどうしてもサボりたいときにその授業の先生に渡せば公休になるし、誰かにどうしてもして欲しいことがあるときも『何でも券』を渡せば何でもしてもらえるんだ。ちなみに『何でも券』を出された生徒や先生に拒否権はない。」
みんなの目がキラリーンと光った。
こわっ!!こんなもん手に入れた奴は5回、何でもやりたい放題じゃないかっ!先生…あんたらすごいもの賞品にしすぎ。
「あ、言っとくが、複製は作れないからな。特別な紙で作ってあるからニセモノ作ってもすぐに分かるぞ。ついでに使えるのは本人のみだ。じゃあ………。」
「スタート!!」
大広場に集まっていた生徒は(俺を含めて)、一斉に向かいにある学校に走った。1位になれなくても、50位以内に入れば今日の夕飯が豪華食事になるんだ!俺だって頑張るに決まってるだろう!
かくして、純高宿泊交流名物の『宝探しクイズ』が始まった。
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「朱鳥都姫、7位、豪華食事決定!」
「よっしゃあ――――。」
向かいの学校に入って俺は4・5箇所探しただけで問題の書かれたプレートを見つけ出し、また先生のいる大広場に戻って問題を正解した。意外なところに隠されていて、大雑把に探しているほとんどの生徒たちはなかなかプレートを見つけ出せないだろうと思う。
やっぱ俺は繊細だからなぁー。でも結構早く見つけたのに7位なのか。俺の前の6人は一体誰なんだろ…?
「都姫ちゃん、お帰りなさいvv」
この声は………。もしかして、もしかするのか?
俺の予想通り、青龍がのほほーんと座布団に座って、お茶をすすっていた。
「青龍……、お前………。」
「都姫ちゃんは7位だったのね。じゃあ、私からのおめでとうのチューを差し上げようかしら?」
青龍は俺にずずいとにじり寄ってくる。このままじゃ俺のセカンドキスまでもが奪われてしまうじゃないかっ!
「いらんわ、ボケ―――――!!!」
右足を蹴り上げた。よし、手ごたえありだ。
「都姫ちゃん……愛のムチにしては、痛すぎよ…。ぐはぁっ。」
見事に青龍の大事な所(あえて言うなら、帝都さんのジュニア/笑)に命中した。青龍は、股間を抑えてうずくまっていたりする。
ちょっとやり過ぎたかな?
「だっ、大丈夫か?青龍…?」
「大丈夫…よぉ。都姫ちゃんに蹴られるなんて、本望だもの…。」
にしては、痛そうだ。
「なら、いいや。そういえば青龍、お前、何位だったんだ?」
俺の前にいてたから、6位までに入ってるんだろうけどさ…。
「私?1位に決まってるじゃない。『何でも券』、何に使おうかしらねぇ?と、き、ちゃ、ん?」
立ち直った青龍が何か企むような微笑で俺の質問に答えた。もちろん、俺の背筋がぞっとしたのは言うまでもない。
もう一回ぐらい蹴ればよかった。
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第二弾の続きが、すんげー遅くなってごめんなさい。
まぁ、何にしろ、お馬鹿な子達の登場ですvv
と言うか…この学校、なんちゅーことを(笑)
都姫ちゃん、帝都さんのジュニアを蹴りすぎると、
使い物にならなくなっちゃうよ?