Over Drive -人生山あり谷あり-

 

 今、襟元のシャツにクローバーのマークが入ったシャツを着て、その上からセーターを着込み、グレーのズボンを穿(は)いている少年達が、バスの中に大人しく座って…るはずはない。同じ高速道路を走っている外の車にまで聞こえそうなほどの煩さで、バスの中はとても騒がしかった。

ちなみに今現在は、5月に入り学校生活にも馴染んできたというところで、一泊二日の宿泊交流にお出かけしている真っ最中なのだ。

 

ちなみにそのバスの中は、1年C組、俺、朱鳥都姫や俺の友達、明神真尋、その他もろもろがいるクラスだ。こんなときこそ、あいつ、青龍のオカマ野郎と一緒のクラスじゃなくって、本当に良かった。あいつはE組だから、間に1台バスをはさんでるし、どう頑張ってもこっちまで来れないに決まってる。そうさ、忍者じゃないかぎり無理に決まってるんだ。そうそう、青龍と知り合ってから踏んだり蹴ったりな俺の人生、今だけでも幸せって思っておかないとな!

「こんなときまで、あいつのこと思い出したくないし!」

思わず声に出して、呟いていた。

「あいつって…誰のことかしら?私の他に、都姫ちゃんの頭を悩ませる奴がいるなんてっ。」

「誰のことって、決まってるだろーが!あいつだよ、あいつ。青龍帝都とか言う名前の、オカマ野郎のことだ。」

あいつのことを考えるだけで、ハラワタが煮え繰り返りそうだ。

「いやーん。ひどいわねぇ。私はオカマなんかじゃないわよ?れっきとした、男だものvv」

 

…………………。

 

「どーして、お前がここにいるんだ?」

さっきまでは真尋が横に座っていたはずの窓側の席に、何故か!俺の天敵、青龍がくつろぐような格好で座っているのだ。俺はビックリするよりも何よりも、地の底から搾り出したような低い声で、青龍に尋ねた。

「さっきのインターチェンジのところで、都姫ちゃんのいるバスに乗り換えたのよ?」

サラッと言いやがって。あーもー腹立つ。

「……真尋は?」

「明神ちゃんなら、前の方の席で、他の子と話してるわ。都姫ちゃんによろしくね。って言ってたわよ。」

何が『よろしく』だ!アホ真尋め。と言うのは、心の中だけにしといて。(生徒会長が怖いから。)

 

「てめぇ、さっさと出て行け。」

「まっ、ひどいわねー。走ってるバスからどうやって降りろって言うのかしら?」

「窓から飛び降りろ。」

「都姫ちゃんが一緒なら、喜んで。」

「くたばれっ!」

あーだこーだと青龍と言い合いをしていると、だいぶ目的地に近づいたらしいバスは、アスファルトじゃなくて、砂利道を走り出した。途端にバスが小さく左右に揺れ出す。さっきまで騒いでいたクラスメイトの口からは、騒ぎ声じゃなくて、喚(わめ)き声が聞こえてくる。どっちにしろ煩いには変わりないけど。

 

いきなり大きく左右に揺れて、俺は座っていたけども体勢を崩し、隣りの青龍の身体に倒れこんだ。思いっきり不本意だが。痩せているように見えて、意外にもそれなりの筋肉がついているらしい。

「おまえ、ひょろひょろそうに見えるけど、結構筋肉ついてるんだな。へ〜、かなり意外だ。」

そう言いながら、服の上から青龍の胸板を触りまくってしまった。

「いやん。都姫ちゃんのエッチ。」

青龍は触っていた俺をそのまま両腕の中に抱きしめて、頭を頬擦りしてきた。一瞬なにが起きたのか分からなかった。とんでもないことをされていると気がついた時には、俺は全身の力を腕に込めて、両手で青龍を押しのけた。

 

ゴンッ。

 

すんげー痛そうな音がしたぞ?

まじまじと見ると、俺が押しのけたせいで、青龍の頭がバスの窓ガラスに思いっきりぶつけたらしい。

あははははは……。いたそぉ〜。

そう思いつつも、『ざまーみろ。』と思う方が強いが。

 

「おーい。青龍?大丈夫かー?」

一応俺がぶつけたようなもんだし、まだ痛そうに頭を手で抑えている青龍にめずらしく優しく声をかけてみた。

「都姫ちゃん…ひどいわ。」

よよよ…と時代劇をお姫さまをするような感じで、もうさぞかしオカマっぷりを見せつけるように、俺に寄りかかってきた。思わずその気持ち悪さに腰を引き気味になりながらも、青龍のぶつけたらしいところらへんの頭を擦ってみると、本当にたんこぶっぽいのが出来ていた。

「あ、本当にたんこぶがある。」

「そうなのよ〜。都姫ちゃんがめいいっぱい押しのけるから。」

にじりにじりと青龍の顔が近づいてくる。俺は離れようとして、えびぞりに近い格好になっていく。周りの奴らは見ないふりしながらも、興味津々でチラチラを俺と青龍を見ている。

「何でこっちに近寄ってくるんだ。離れろ!」

「都姫ちゃんに慰めてもらおうと思って。ねv」

 

ねv…じゃね―――――!!

 

どうでもいいツッコミを頭の中で思い浮かべていると、唇にむにゅう〜とした柔らかいもんがくっついた。思考回路が飛びそうになりながらも、必死で何が起こったのかを考えていると、半開きになった俺の口から、ますますむにゅう〜としたもんが入り込んできた。

 

「……んっ。」

 

自分で自分の出した声に驚いて、慌てて唇からむにゅう〜としたものを外し、その時点で、やっと俺の初チュウがこのオカマ野郎に奪われたことに気付いた。

青龍の顔は、すんげー嬉しそうにニヤニヤしていやがる。

 

「気色悪いことしてんじゃねー。ボケが!!!」

 

もう一度突き飛ばした青龍の頭が、もう一度窓ガラスにぶつかったとき、俺は天罰だ!と思った。

 

 

恐怖の宿泊交流は、まだ始まったばかり……。

 

 

つづく。 もどる。

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第二弾は、さっそくお泊り旅行でございますv

まだまだ始まったばかりですが、どこにいっても

オカマちゃんはオカマちゃんってことですよね…(笑)

では続きをお楽しみに…v