DAYDREAM -最悪の出会い完了-

 

ほぼ掃除が終わりかけたその時、俺にとって最大の悲劇が訪れたと言ってもいいぐらいの、事件が起きた。一生忘れたくても忘れられないような衝撃なことだったのだ。あまりのショックに開いた口がふさがらなくて、ヨダレが出そうになったぐらいに!

 

「いやーん。本当に可愛いわねー。私好みだわ。」

廊下から聞こえてくる声に、俺は耳を疑った。明らかに男の声なのに、どう考えても女の話し方に疑問を持った俺は、一瞬混乱に陥った。

どう考えても男声なのに、話し方が女みたいなんて………まるで……おかまちゃんじゃないか?と。

思考回路がその一点にたどり着いたときには、もう手遅れだったのだ。後ろから手が伸びてきて、俺と箒(くどいようだが、ほうきと読む。)は羽交い絞め、基、抱きしめられてしまった。

真尋に助けを求めようとして涙ウルウルの目で訴えたんだけど、真尋はやっぱり最強だった。

「あれー?帝都さん?どうしたのー?」

お前の知り合いかいっ!!

俺、こいつに関わるとえらい目に合うような気がしてきた。今さら後悔しても遅いけどさ。だいたい何でこんなおねぇ言葉を話す奴なんかと知り合いなんだよ。お前の交流関係ゆっくり聞いてみたくなったぐらいだ。

 

「明神ちゃんのクラスに可愛い子がいるって聞いてねー。私可愛い子が好きだから、一体どんな子か見にきたってわけよー。それじゃあ、本当に可愛いじゃない。髪の毛はサラサラだし、目はくりっくりだし、ばっちり私好みなの!!」

「へえー。帝都さんの好みって都姫みたいな子だったんだ。良かったね。帝都さんの好きな子が見付かって。僕、これで安心できる。」

「もちろんよvvほんと明神ちゃんと美王(みおう)には迷惑かけたものね。」

「気にしないで下さい。」

この二人ときたら、俺がまだ羽交い絞めを受けているというのに、普通に話しやがって。しかも何だよ、俺のことを掴んでいるおねぇ言葉を話している奴の顔は見れないし……。

「ってゆーか、いつまで俺にしがみ付いてんだよ!」

いい加減にイライラしてきて、まだ顔の見えないおかまに、俺はミゾオチを喰らわした。結構良い感じに肘が入ったから、そうとう痛いと思うけどな。俺に了承を得ずに抱きついてきた罰だ。

ざまーみろ。

 

緩んだ腕から抜け出して、俺は真尋に言い寄った。

「真尋!一体、この気持ちの悪いおねぇ言葉の奴は誰なんだ?急に俺に抱きついてきて、うっとおしい!」

「僕らが1年C組で、隣りの隣りの、1年E組の青龍帝都(せいりゅうていと)さんだよ。」

「何で『さん』付けなんだ?」

俺のミゾオチを喰らって悶えながらも、諦めないのか青龍帝都という奴が力なさげに俺に圧し掛かってきた。身長が頭半分ほど違うのか知らないけど、重い。肩に顎を乗せてくるなー。

「私が一つダブってて、本当だったら2年生なの〜。でもいっつも明神ちゃんに敬語使わなくても良いって言ってるのに、使うんだから。」

2回目のミゾオチを喰らわそうとしたけど、おかまちゃんは同じことはお見通しよって感じで見事にミゾオチの寸前で俺から離れた。

「何となく癖になっちゃってるんですよ。で、帝都さん。もう帝都さんが目つけたぐらいだから知ってると思うけど、今帝都さんが抱きついていたのが、僕の友達、朱鳥都姫。都姫、帝都さんはおねぇ言葉だけど、それ以外は普通の人だから。仲良くしてあげてね。」

こんな初っ端から抱きついてくるおかまちゃんと、誰が仲良く出来るもんか。俺にとったら、生まれてから今までで史上最悪の出会いとも言える。

「よろしくね。と・き・ちゃ・んvv」

「誰がよろしくするか!」

「起こった顔も可愛いー。」

今度は真正面から抱きしめられて、いきなりうなじにちゅうされた。

「気色悪いことするな―――!!」

 

ミゾオチどころか、俺の必殺技の『おとといきやがれアッパー』がおかまちゃんこと、青龍帝都の顎に命中した。

ざまあみやがれと思っていたが、青龍が口走った言葉に、背筋がゾクゾクッときた。

 

「これも、愛のムチよね…。…うふ。ぐは。」

 

 

顎に命中したにも関わらず、青龍は全く衰えず、俺が掃除が終わって箒(くどすぎるが、ほうきと読む。)を片付けているときも、何故か寄り添ってやがる。うぅ〜、暑苦しい。

「カマ野郎、いい加減に離れろ。マジでうっとおしいぞ?」

「まっ、そんなこと言わないでちょうだい。おねぇ言葉なだけで、立派な男の子なんだから。」

そう言われても、その言葉の時点ですでに立派ではないような気がするが。

「まぁまぁ、それぐらいにしてさ。掃除も終わったし、カフェに行かない?僕、都姫に紹介したい人がいるんだけど。その人とカフェで待ち合わせをしてるんだ。」

お前のせいで、こんな変な奴につかまったんだろうが!と言ってやりたい気持ちを抑えながらも、紹介したい人に興味を持った俺は、とりあえず頷いた。

「もしかして、明神ちゃんの紹介したい人って、美王のことかしら?」

「そうですよー。」

みおう?そういえば、さっきもその名前が出てたような…。一体どんな奴だろう?

「でもいきなり紹介して、都姫ちゃん驚かないかしら?」

何で紹介するだけで、俺が驚くんだ??やっぱりおかまちゃんの考えてることは、わからねぇな。

 

つづく。 もどる。

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はい、出てきました。

おかまちゃんではないけど、おかまちゃんです(笑)

最悪の出会いは完了したものの、後一人出てくるので、

続きますー。