DAYDREAM -最悪の出会い完了-

 

 カフェに来てみると、まだ午前中授業で終わりだったせいか、まばらまばらにしか人がいてなかった。俺がここにくるのは、入学式があってからは初めてだけど、入学する少し前、寮にきたころに内緒で覗きに来ていたときに、入ったことがある。

カフェで料理作っているお姉さんは、ここの男子高生の人気者らしい。そりゃあ、女っけのない男子校には、天使みたいなもんだろう。と思っていたんだけど、料理を作っているお兄さんまで人気者らしいのだ。俺はそれを初めて来た時に聞いて、すんげー疑問に思っていたが、青龍とかいうオカマ野郎を見てたら、そんな気がしてきた。

 

「なぁに〜?私の顔、ジーッと見ちゃって。あら、いやだ。もしかして見惚れちゃったとか?」

「しばくぞ。暑苦しい。おねぇ言葉でしゃべんな。」

俺が冷めた目で見てたにも関わらず、青龍はそんなことにも気付かずに(いや、知ってだったら、もっと嫌だな。)俺にまとわりついてくる。

「都姫と帝都さんが仲良くなってくれて、僕、本当に嬉しいな。」

真尋はそんな俺らの様子を見て、のほほ〜んと笑っていやがるし。あぁ〜誰でもいいから、この状況から俺を助け出してくれ…。

 

「真尋。」

カフェの空いている席に適当に座って、真尋の紹介したい『ミオウ』って人を待っていると、俺の後ろから声が聞こえた。もしかして、今の声の人が『ミオウ』って人なのか?

俺は振り返って、固まってしまった。上から俺や真尋を見降ろしている、その人物は、見た目はとってもクールビューティーってな感じのあだ名をつけてもいいだろ?と思うぐらいの男前…。けれど…目が怖い!!何て言ったらいいんだ?目だけで人を殺せそうな、目からビームとか出そうな、冷酷非道の言葉が似合うかのような目つきなのだ。いや、そうしてるだけなのかも知れないが。

「みーおうっ。」

その冷酷非道な目つきの男に、真尋は物怖じもせずに席を立って飛びついた。ある意味、立派な行動だな。そう思って2人をぼへぇと見て驚いた。『みおう』と呼ばれた目つきの恐ろしい男の人は、途端に柔らかい表情になって、嬉しそうに真尋に微笑んだ。

いくら馬鹿な俺でも分かる。真尋と『みおう』は、恋人同士だ。そう思って、別に違和感はなかった。男同士なんて…そう思っていた俺が、すんなりと2人の関係を受け入れたことにビックリした。

オカマだけは別として!!

そう思って、青龍の方を睨むと、何故かウインクされた。男にされても嬉しくねぇ…。

 

「都姫、この人が僕の紹介したかった人。この学校の生徒会長の新宮司美王(しんぐうじみおう)。美王、こっちが朱鳥都姫。ちなみに都姫は帝都さんのお気に入りらしいから。」

美王…さん?は、真尋の最後の一言に驚いた顔をしたが、すぐに元の無表情な顔に戻って、俺の方を見た。けど、怖い…。さっきみたいに真尋に微笑んでいた顔と違って、恐怖だ…。

「真尋から話は聞いていた。新宮司だ。」

「あ、どうも…。」

かなり緊張しながらも美王さんと握手をした。

 

「あ、美王ったらせこい!私の大好きな都姫ちゃんに触らないでよー。」

美王さんとの握手を引きちぎられて、腕を引っ張られ、俺はスポンと青龍の腕の中に納まってしまった。

「うがあ―――。やめろっ!ばか!変態!」

あばれるものの、おねぇ言葉をしているくせに意外に力の強い青龍から逃れられない。真尋は美王さんに引っ付いて、甘えている。だれも俺を救ってくれる奴はいないのかよ…。俺って…俺って…すんげー災難な元にいるんじゃないか?

「やっと好きな奴が出来たお前のんに、手出す気はないさ。俺には真尋がいるしな。せいぜい頑張るんだな。何かあったら、少しぐらいは協力してやる。」

美王さんが言ったことに俺は疑問に思う。さっき、真尋も言ってたけど、こいつ…青龍って昔なんかあったのか?だいたい好きな奴が出来たぐらいで、そんなにホッとすることじゃないだろうし。まぁ、俺には関係ない…って、そんなわけないだろーが。青龍に好かれた俺が一番、貧乏くじを引いて…。あんまり深く考えるのはよしとこう。

 

「なぁ、真尋。俺に紹介したいって人が美王さんだろ?で、真尋と美王さんって恋人同士なのか?」

さっき思ったことを直球に聞いたら、真尋の奴、バレバレだってことに気付いてなかったのか?めっちゃ顔が真っ赤に染まってしまった。

「なっ、あ、う、うん。分かっちゃった?」

どもりすぎだってーの。

「まぁ、見てたら。」

「都姫は、嫌じゃない?その…僕と美王が男同士で付き合ってるの。」

「へ?別に。男同士が付き合うのが駄目だって言うほど、俺は落ちぶれちゃいないぞ?ただ、俺はこのオカマ野郎の青龍と付き合うなんて気は、全くないけどな。」

「良かった。都姫にそう言ってもらえて。ありがと。」

俺は青龍の手が緩んだ隙にそこから抜け出そうと思っていたが、一向に力が弱まるようすがない。くっそー馬鹿力だしやがって。

「いや〜ん。都姫ちゃんったら、可愛い顔してそんなに酷いこと言うんだから。私、悲しいわ…。」

泣く振りをして、俺にしがみ付いてきて、掃除していたとき同様に、俺はホッペにちゅうを受けてしまった。

 

「止めんか、ボケェ―――――!!!」

 

必殺技の『おとといきやがれアッパー』を食らわそうと思ったが、一度喰らったせいか、サラッと交わされてしまった。けど、第2の必殺技、『ごくつぶし鼻パンチ』が決まった。簡単に言うと、俺のパンチが相手の鼻にぶつかると言うことだ。

「いひゃい…。都姫ひゃん…。ひゃなひゃなくひぇも…。やっひゃり、ひゃいのひゅち…ひょね?うひゅ…。」

(痛い…。都姫ちゃん…。鼻じゃなくても…。やっぱり、愛のムチ…よね?うふ…。)

 

俺、今後の学校生活が心配だ。

 

おわり。もどる。

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冷酷非道の美王さまのお出ましです…。

でも真尋にはメロメロなんで、顔が緩むんですよ(笑)

そして、オカマさんは毎度こんな感じで、都姫の攻撃を受けるんですねぇ…。