DAYDREAM -最悪の出会い完了-

 

 純聖林高等学校(略して、純高。そして俺には初体験の男子校。)に入学して次の次の水曜日。

クラスのほとんどが中学からの持ち上がり組で、外部受験してここにきた俺は馴染めないで…と言うよりも、馴染みすぎていた。

 

俺の母親がどうしても俺を純高に行かせたかったらしく、「高校は近いところが一番!」という俺の意志も関係なく、勝手に決められて勝手に受験の用意までされていたのだ。ムキになって反抗する気も起きず、大人しく受験すると受かってしまった…と言うわけだ。だいたいここの外部受験は難しいで有名なのだが、何故か要領だけは良い俺は難なく通ってしまったのだ。

自分の家から通うにしては遠すぎるため、純高の寮に入ることが決まったのは一ヶ月前のこと。かなり慌しかったため、中学の友達と別れを悲しむ暇もなく、入学式を迎えて、ついでに2日が過ぎた。

きっと天竜(てんりゅう)や天雷(てんらい)怒ってんだろうなぁ。一緒の高校へ行くって約束までしてたんだし…。会った時には俺…半殺しの目に合うかもしんねぇ。

 

中学からの持ち上がり組は、全員お金持ちのご子息様だ。一般ピープルの俺とは似ても似つかないほど…と言うわけでもないが、お金持ち〜ってな感じのオーラがかもし出されている。中にはそうは思えない奴もいるけれど。

 

「都姫(とき)、何ボーッとしてんの?おなか減った?もうちょっとで終わるし、その後で学校の中のカフェに行こうか?」

そうそう、今、俺に話し掛けた明神真尋(みょうじんまひろ)と言う奴は、この学校の理事長の孫らしいのだが、そんなものは微塵も感じない。だからこそ入学式の日に友達になれたんだろうけど。

「んー。別に腹が減ってるわけじゃねーんだけど…。でもどうせ学校の中だし!タダより安いものはないしな。あー、そう考えるとおなか減ってきたー。」

学校の中のカフェは全部タダだ。だからお昼とか、他にも文房具とか俺の場合だったら寮の家賃とか、授業料に全部入ってるらしい。だから俺が使うお金は、学校の外へ遊びに行くときだけだ。バイト禁止なんだからそれぐらいして貰わないと、俺、ここで生活していけねぇって。

 

35人もの生徒を前にして淡々と話を続けているのは、俺や真尋の担任、緒架澪音(おかれいね)。恩年26歳だそうだ。切れ長の目で、他人を和ませないような眼鏡をしていて(でも担任である。)、真っ黒な髪が印象的な、ちょっぴりステキな大人の男性だ。真尋曰く、保健室の先生とできてるらしいのだが、俺はまだその人に会ったことがない。他の先生や生徒公認と聞いて、俺はますます緒架先生がすごいと思うようになったのは確か。

 

「そろそろ教室が汚くなってきたところで、勝手に掃除当番を決めることにした。校舎は清掃のおばちゃんがやってくるんだが、教室だけは個人の荷物が置いてあるってことで、お前らがやらなくちゃならんのだ。ってことで………、俺から見て左から3列目の奴、全員、今日は掃除当番に決定。」

 

先生から見て、左から、3列目?

 

「緒架センセー。どうゆう基準で決めたんですかー?」

俺の後ろに真尋が座っているのなら、先生に質問をしたのは、俺の前に座っている奴だ。名前はまだ知らない。

俺の前の奴が質問したってことは、俺や真尋も掃除当番ってことだよなぁ?はぁ…。だるい…。せっかく学校後のアフターファイブを楽しむ予定だったのにー。

「俺の独断と偏見で。文句ある奴、うさぎ跳びで校庭100周。」

ニコリと笑いもせずに答えた緒架先生を見て、クラスの35人中、実質34人は背筋が寒くなったのは間違いないだろう。残りの1人は、俺の後ろに座っている、そう、明神真尋である。

「あはは。先生らしいよねー。」

どうしてお前はこんな恐怖が渦巻いている教室で笑っていられるんだよ?かなりの大物だな。

「そうゆうことで、さっさとやって、さっさと帰れよ。じゃあな。」

34人が凍り付いて、1人が笑っているクラスを何とも思わないかのように、緒架先生はやっぱり無表情で教室を出て行った。

先生と付き合っているってゆー、保健室の先生見てみたいよな。あの先生と付き合うってぐらいだから、そうとうの美人であることは間違いないな。

(このときの俺は保健室の先生が男ってことを、まだ知らなかった。だいたい、保健室の先生ってのは、女って相場が決まってるんだよ。)

 

緒架先生が出て行ってから、やっと溶け出したかのように他の生徒たちがザワザワと動き始めた。掃除当番に当たってしまった俺の列を覗いては、教室を出ていそいそと帰ろうとする者までいる。

ここで掃除当番をさぼったら、先生の恐怖のお怒りが待っているゆえに、俺らはお互いぎこちない笑いをしながら、掃除を始めた。(ただ1人、真尋を覗いて。こいつは普通に笑っていた。)

 

「ひめ、俺たちが代わりに掃除するって。」

箒(ほうきと読む。)を手に持って教室の床を掃いていたが、後ろから聞こえてきた声に手が止まった。声の主の顔を見ると、案の定、俺の親衛隊とか何とかぬかしていやがる舞殊啓(まいじゅけい)というアホな奴だった。

入学式から俺に一目惚れしたらしい(男が男に惚れてどうするよ?)舞殊は他の倫牙暁(りんがあきら)・松木平色(まつきひらしき)という2人のダチを従えて、俺に勝手に『ひめ』とかゆう、きしょく悪いあだ名をつけて、俺にすりよってくるのだ。

「うっとーしいから、帰れ。」

本当に鬱陶しいから言っただけなのに、舞殊の後ろにいた倫牙が口を出してきた。

「朱鳥くん、手伝ってあげようって人に失礼な発言じゃない?」

「舞殊は『代わりにする』って言っただろ?俺は別に代わってもらうほど落ちぶれちゃいない。用がそれだけなら、さっさと帰ってくれない?あんまり人数が多いと掃除しにくい。」

俺は正しいことを言ったのだが、倫牙はますます俺に噛み付いてきた。

「入学早々、態度でかいね。」

「あんたよりかはマシだと思うけどな。」

俺と倫牙の言い合いがまだ続くと思ったけど、真尋がやんわりと止めてくれた。

「掃除が終わらないから、その話はまた今度にして、ね?舞殊くん、掃除は僕や都姫がちゃんとやるから、今日はいいよ。わざわざ声かけてくれて、ありがとう。」

こうなってしまえば、誰も何も言えない。ある意味、最強はこの明神真尋なのかも知れない。

 

つづく。 もどる。

――――――――――――――――――――――

いやぁ、初っ端からややこしいですねー。

人物名が多すぎる多すぎる(笑)

しかもまだ、もう一人の主役が出てきてないし。

次、出てきます!あの幻(笑)のおねぇ言葉が!!