戸惑いの気持ち・猛視点(前編)

 

 

 

 

 

――――― ゴクンッ ―――――

 

 

「雅く・・・ん?何・・・キ・・・ス・・・・?」

 

雅くんからの、突然のキス・・・。最初、何が起こったのか分からなくて、呆然としてしまってから、ぽつりぽつりと声を出していた。

 

どうして、こんなことをするの・・・・?

雅くん・・・何を考えてる?

体中が熱くなる・・・。体の中心が・・・熱い。今、飲んでしまった薬の効力・・・・?

 

「猛・・・オレは猛のこと、友達としてじゃなく・・・一人の男の人としてずっと見てたんだ。10年ぶりに再会したあの日から、ずっと猛のことが好きだった。いくらニブイ猛でも・・・オレの気持ち分かっただろう?」

 

「ボクは・・・はぁ・・・、男だ・・・。雅くんも・・・男じゃない・・・か。」

 

雅くんが、何でこんな行動を取ったのか、ボクには分からない。好きだと言われても、男同士じゃないか!?ニブイままで良い。ニブイままの方が、何も知らなくてすむのだから。

 

――何を飲ませたんだ・・・?――

 

「ないしょ。猛は、こんなオレと一緒になんか、いられないだろ?だから・・・一度で良いから、猛に・・・抱いて欲しい。猛のこと・・・好きだから。」

 

「雅くん!!」

 

 

 

 

目の前にいる雅くんの、今まで見たこともないくらいに艶っぽい色気が、ボクの周りに渦めいている。

ズボンの上から、ボクのモノを触られ、ゾクゾクっとくる。

 

「そこはっ・・・触る・・・な・・・。」

 

触られた時、自分が自分でなくなりそうな気になった。

いつもの自分の話し方と違う・・・。

 

体中が熱くて、苦しんでいるボクのズボンから取り出したモノを、雅くんは何の躊躇もなしに、口にくわえ始めた。

 

「何す・・・る・・・、あぁ・・・。」

 

ボクのモノを口に咥えたままで、雅くんは視線をボクに絡ませてきた。そして、口元を歪め、口に含んでいた猛のモノの先を、少しだけ歯で刺激を与えた。

 

「んんっ・・・イク・・・あっ・・・あぁっ、はぁ・・・はぁ・・・・。」

 

 

―――パチンッ―――

 

雅くんの口の中へ、自分の精液を放った途端、頭の中で何かが弾ける音がした。

頭の中が真っ白になった。

 

「たけ・・・る・・・?・・・・・・うっわぁぁ・・・。何!?どうしたんだ?」

 

雅くんが驚いて、声をあげるのが遠くから聞こえてくる。

 

「・・・・・・雅が・・・抱いてって言ったんだろ?だから・・・抱いてやるんだよっ。」

 

ボクの声も聞こえてくる。でも、ボク自身の声じゃない。だれかが勝手に話してるみたいな感覚だった。

 

雅くんを・・・抱く?そんなこと、出来るわけない。雅くんは・・・友達なんだから。

 

 

それから、映画を見ているみたいだった。

けど、主役はボクと雅くんの2人だった。

 

「いっ・・・やぁっ・・・んん・・・」

 

雅くんの艶っぽい声が、頭の中に響いてくる。ボクに胸の突起を触られて、喘いでる姿がボクを翻弄させた。

 

「男なんて抱いたことないから・・・手加減なんて出来ないからな。」

 

ボクは雅くんの、奥の蕾へと、自分のモノを突き刺していた。どう見ても、全部入りきらないように見てる。けど、無理矢理に奥へ奥へと押し込んでいた。

 

「いっ・・・痛いっ!!裂けるっ・・・ちょっ・・・と・・・待って・・・・・。」

 

雅くんの叫ぶ声が響く・・・。それでもボクは、やめることなく突き進んでいく。

 

 

気がつけば―――――朝になっていた。

そして・・・・・、雅くんの姿は、どこにもなかった。

 

 

.。・:*:・`☆、。

 

 

あの時のことは、夢だと思った。けど、体がすべて覚えていて、何回寝ても忘れることが出来なかった。

 

夏休みに入り、以前から仲の良かった女の子と付き合い始めた。

 

雰囲気が雅くんに似ている子。

それだけで、ボクは雅くんから逃れるように付き合ったんだ。

その子と話すたびに、雅くんが頭の中に浮かんできた。

その子の笑顔を見るたびに、ボクの中に罪悪感が張り巡らされた。

 

 

大学が始まる、前の日のことだった。毎日、雅くんのことを思ってしまう自分が、分からなくなっていきながらも、彼女と付き合ったままだった。

 

そして・・・彼女が漏らした一言で、ボクは・・・・・・・。

 

「ねぇ、猛くんと久流くんって仲良かったよね?」

 

ボクは、いつも雅くんって呼んでいたから、久流って言われても、すぐには雅くんと結びつかなくて、戸惑ってしまった。

 

「えっ・・・あぁ、うん。雅くんとは、幼なじみだからね。」

 

「今度、久流くんと話してみたいから、3人で会わない?私、前から久流くんのこと、かっこいいな〜って思ってたんだ。」

 

彼女の言った言葉に、ビックリして、ボクは叫んでいた。

 

「本気で言ってるの!?」

 

雅くんと雰囲気が似てるなんて、ボクは間違っていた。雅くんは、もっと他人に気をつかえる。この子みたいに、無神経じゃない。

それに、雅くんを紹介するなんて、イヤだ。

 

どうして気付かなかったんだろう・・・・?

雅くんは・・・・・ボクの大事な人なのに。

ボクは、この子のことなんて、好きじゃなかった。そう思い込もうと、していたんだ。

認めたくなかったんだ。男同士だなんて。あの日から、あの日、雅くんを抱いてしまった時から、ボクは・・・・・・・。

 

ボクは、雅くんが好きだったんだ。

 

.。・:*:・`☆、。

 

次の日から、大学が始まった。昨日、勝手に先に帰ってしまったボクは、彼女に謝った。そして、別れを告げた。彼女との別れは、あっさりしたものだった。

結局のところ、彼女の方も、それほどボクのことを好きだったわけじゃなかったらしい。

 

少し罪悪感が薄れた気がした。

 

 

雅くんへの思いが、ボクの中ではっきりしてから、大学のどこにいても雅くんを探していた。目が合うと、向こうがあからさまに目を逸らすのが分かった。

 

ボクと目があって、どうして良いのか分からない感じだった。ボクは、雅くんを見れば見るほど、好きになった。

けど、話しかけることが出来なかった。雅くんの隣りに、いつも祐希がいたから。

 

 

それから、1週間ほど経ったころ・・・講義をサボって、雅くんと祐希が教室を出て行くところを横目で見た。雅くんの顔が真剣だったことに、不安を覚えて、ボクは2人の後を思わず反射的に追いかけてしまった。

 

ボソボソと話声が聞こえた。

 

「オレ・・・・どうし・・・よい・・・。」

 

雅くんの声だ。・・・・・でも、遠すぎて途切れ途切れにしか聞こえてこない。

何を話してるんだろう。友達の話では、雅くんと祐希は付き合ってないと言っていた。けど・・・もしかして、今、告白とかしたら、どうしたら良いんだろう?雅くんは、もう祐希が好きなのかも知れない。

 

ボク・・・こんなところで、何やってんだ?

隠れて、2人の会話を聞こうとして、何がしたいんだ?

 

凄い惨めな気持ちになった。これ以上惨めな気持ちになる前に、教室に戻ろうと、体を半回転させた。

 

やっぱり、戻ろう。盗み聞きなんて、ボク・・・最低だよね。

 

 

「んっ・・・ゆうっきぃ・・・。」

 

!?

雅くんの、今までとは違う声が聞こえてきた。

あの時・・・ボクと雅くんが抱き合った日に聞いた声だった。

 

―――― ガサッ ――――

 

驚いたボクは、草むらの影から、雅くんと祐希がいてる場所へ出てしまっていた。そして、そのとき見たものは・・・・・・・雅くんと祐希のキスだった。

 

ボクの顔を見た雅くんは、一瞬にして青ざめていた。後づさって、祐希から離れていく。

 

「猛―、他人のキスしてるところを覗き見して、何が楽しいんだ?さっさと違う場所に行ってくれないか?いくら‘友人’でも、恋人とのキスを見られたくないんだけど。」

 

祐希の言葉が、胸に突き刺さった。祐希は、再び雅くんにキスを落としていた。

雅くんのくぐもった声が聞こえてくる。

 

祐希と雅くんが、恋人・・・・・?

 

「雅くん・・・・・。」

 

ハッとした顔で、ボクの方を怯えた目で見てくる。

 

どうして・・・?雅くんはボクのこと、好きって言ったんじゃなかったの・・・・?

結局、雅くんも今までの女の子達と、一緒だったってことになる。

ボクは・・・・雅くんを放したくない。離れて欲しくない。一緒にいたい。好きって言って欲しい。キスしたい。ボクを見て、笑って欲しい。

 

「痛っ・・・。猛、痛い!!腕、離せよっっ!!」

 

自分が何をしているのか、分かっていなかった。後ろから聞こえる雅くんの声で、ボクは歩いていることが分かる。幾度か、後ろから少し大きめな声が聞こえてくるけれど、気にもしなかった。祐希から、離れようとしていた。

 

どれくらい歩いたんだろう・・・。

 

「猛、痛い・・・。痛い。猛・・・・、たけ・・・る・・・、た・・・ける・・・。たける!!!」

 

 

 

のべる。 つぎへ。