10万HIT記念小説

 

 

eautiful ife

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「社長、さっさと目の前の山積みになっている書類を片付けてください」

社長室の社長専用の机に山積みになっている書類の向こう側に、社長と思われる人物が専用の椅子に座り、足を机の上に乗せながらウトウトとお昼寝の時間を満喫していた。

声をかけた人物はスースーと寝息を立てて寝ている社長に向かって、もう一度さっきより大きな声を出した。

「良永(よしなが)社長!いい加減にしてください!!」

 

*

 

いきなり聞こえてきた声に驚いて、私、良永 宏明(よしなが ひろあき)はビクッと身体が飛び跳ねて、椅子から転げ落ちそうになってしまった。

「……っ!?」

視界に秘書の時枝 滸(ときえだ ほとり)の姿が目に映り、眉間に皺を寄せた。

「オイ。部屋に入るときはノックしてから入るのが常識じゃないのか?」

滸は全くの無表情で私に言い返してきた。

「常識であるノックを5回ほど繰り返したのですが、社長のお声がなかったので失礼ながらも入らせて頂きました」

クソッ!!

何も言い返す言葉が見付からない。

私の方が社長でえらいはずなのに。

どうしてここまで秘書に頭が上がらないのかと自分でも考えてしまう。まだ滸が来てから一週間しか経っていないのに。

……はぁ………。

惚れた者の負けってことだな。

「溜息ばかりしていると幸せが逃げていきますよ」

誰のせいだ。

滸は私の気持ちを知るはずがないと思うのだが、どうも手のひらの上で操られているような気がするぞ?

「笑わなすぎるのも福が逃げていくぞ」

ちょっとばかり悔しくて滸に言い返して机にある書類に目を落として仕事をし始めた。そのとき、めったに表情を変えない滸が一瞬影を落としたような暗い表情になったことに、私は全く気付かなかった。

私は滸の笑顔が見たかっただけなのに。

 

***

 

滸が私の秘書になる3ヶ月前、全く知らない同士の私たちは一つのバーで出会った。仕事が一段楽したから一ヶ月ぶりに馴染みのバーに飲みに着てみたら…滸がいたのだ。たまたま私がいつも座る席の隣りに滸が座っていたから声をかけた。一人の飲むのが好きな私は、普段は絶対に声をかけないが、つい…かけてしまった…と言うのか。

「隣り座らしてもらうよ。」

滸の返事を聞く前に、私は隣りの席へと腰をかけた。

「マスター。いつもの頼むよ。」

「おや、良永さん。ここに来るのは久しぶりですね。」

愛想のいいマスターはそれだけ言うと、にこにこと笑いながら深く追求もせずにボトルワインをグラスについで私の目の前に置いた。そんな私とマスターのやりとりを横目で見ながら、滸は黙々と酒を飲んでいた。

「名前を…教えてくれるかな。」

「………滸。」

「ほと、り…か。いい名だな。」

「あんたは………。」

「宏明だ。」

目を合わしたとき、直感で同類だと感じた。

だから誘った。

滸もほんの少し照れた表情で頷いた。

 

 

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03/03/22up