宣戦布告!
「相模(サガミ)、好きや。付き合って欲しい!!」
夕日の沈みかけたころ、教室で告白した人物は−今井 岬(イマイ ミサキ)。そして…告白された人物は−相模 大介(サガミ ダイスケ)。
岬が相模に告白するまで、この2人の関係は、ただのクラスメートにすぎなかった。
沈黙が続く中、その沈黙に耐えられず先に破ったのは岬の方だった。
「――アホなこと言って、ゴメン!!!」
何も話してくれない相模のそばにいるのが耐えられなくて、岬は教室から逃げ出してしまった。
薄っすらと浮かぶ涙を堪えながら、岬は教室を後にした。
◇
−次の日−
「岬(ミサキ)、次、移動教室だから、いい加減に起きろよっ。もうとっくに前の授業終わってるんだからな!!」
同じクラスの岬と一番仲の良い中尾(ナカオ)が、机に突っ伏していた岬の頭をペシンッと叩いた。
岬は、もぞもぞと、身体をよじりながら、少し動いてまた止まる。――――バッ。
今気がついたかのように、顔を持ち上げて、キョロキョロと辺りを見回す。目は半分閉じていて、近くに立っている中尾の顔を数秒眺めた。
「んん?あ――、中尾おはよぅ〜。じゃ、おやすみぃ〜。」
岬は、声を掛けて、また机に突っ伏して寝てしまった。中尾の額の筋に、薄っすらと血管が浮かび上がってきた。大きく息を吸って、岬の耳元に向って、声を張り上げた。
「起きんかコラー!!!」
中尾の声にビックリして、岬は思わず席から立ち上がって、こう言っていた。
「スッ…スンマセン。分かりません。」
………。どうやら、授業中に先生に怒られたと思っているらしかった。数回まばたきをしてから、さっきと同じように中尾の顔を見た。
「あれ?中尾、どうしたん?」
「お前、もう授業終わってるの分かってるか?さっさと次の用意をしろ。」
「えー?いつの間に終わったん?次って、何やったっけ?」
ん〜、起きたばっかりで頭働かんわ〜。机なんかで寝るから、身体の節々が痛いし…。ふぅ〜。
「次は、社会科の樋口先生。行き先は、社会科教室。もう、俺、先に行くからな。」
中尾は、いつまで経ってもボーっとしている岬に、痺れを切らして教室を出て行こうとした。
「中尾ー待ってぇや〜。もう用意できたから、一緒に連れてって〜。」
岬は大阪の学校から、この学校に転入してきて、まだ2ヶ月ぐらいしか経ってなかった。速攻で仲良くなった中尾と、行動をともにしているせいで、いまだに岬1人では、移動教室に行くのに迷うぐらいだった。それぐらい、この学校は、大きいらしい…。
なんだかんだ言って、面倒見の良い中尾は、岬を待って、2人で社会科教室へ向った。
岬と雄一が社会科教室に着いた時、ちょうど始まりのチャイムが鳴った。2人とも空いてる席に適当に座った。そのとき、岬の好きな人−相模 大介−が目に入った。相模も岬の方を見ていて、目が合って離せなくなった。
「岬、いつまで空気イスしてるんだ?」
イスに座ろうとして相模と目があった岬は、膝を曲げて座ろうとする所で止まっていた。
中尾の言葉でハッと我に返って、相模から目を逸らした。
「授業始めるからな。みんな席に着いてるかー?」
ドアを開けながら入ってきて、教室を一回り見たのは、樋口先生だった。
この人の授業はおもしろいけど、昨日のことがあって寝付けずに寝不足だった岬には、どんな授業でも苦痛だった。
地図を広げて、先生とみんなが声を上げながら話しているのにも関わらず、岬は寝息を立てて寝てしまっていた。
その時の岬の寝顔ときたら、廻りにいてる同じクラスの男どもの半分以上は、見惚れてしまっていただろう。そう、岬の好きな人−相模 大介−も、例外ではなかった。
そんな岬にも容赦がない樋口先生は、みんながもう少し寝顔を見たいと願っているのを無視して、岬の頭を丸めた地図で殴った。
パコ――ンッと良い音が、社会科教室に響き渡った。
その音を聞いて、きっと誰もが、岬の頭の中は空っぽではないか??と、疑ったことだろう。
「今井、私の授業はおもしろくなかったのか?」
今度ばっかりは、中尾に起こされたわけでもなく、恐れも多い先生だったので、岬はとっさに謝っていた。
「うわっ、ゴメン!何でもするから、補習とテストだけは止めといたって。」
樋口先生は、寝てしまった生徒には限りなく厳しい。補習を受けさせて、小テストをする人なのだ。
拝むように頼む岬を見て、ニヤリと樋口先生は笑った。
「ほほぅ、何でも…ねぇ。じゃあ、この教室の掃除を放課後に1人でしてもらおうか。」
目が点になったと言うのは、まさしくこのことだと岬は考えていた。
「マジでぇ!?えぇ――――――!!!」
そして、放課後…。
岬は1人残って、広い広い教室を掃除しながら、相模のことばかり考えていた。お陰で、一向に掃除が終わらない。
「やっぱり逃げたのが、まずかってんやんなぁ〜。」
はぁ〜っとため息をつく岬の背中には、哀愁が漂っている。
「何であの時、俺、逃げてんやろ……。」
告白した後、お互い沈黙している間、相模はずっと岬の目を見ていた。
強い眼差し……岬が惚れた原因でもあるが、あの時逃げた原因でもあった。
1人で悩んでいた岬は、自分のいる教室のドアが開くのに、気付いていなかった。
「――― 今井。」
ドアが開いた時、岬は窓側に顔を向けて、そこから見えるグラウンドに目をやっていた。
姿が見えなくても、好きな人の声はすぐに分かる。
“それぐらい、ボクは相模のことが好きやねんな。”
ゆっくりとドアの方を振り返ると、思ったとおり相模だった。
「さが…み……」
窓の方にもたれていた岬の横に、相模が並んでもたれた。また、沈黙が訪れる。…しかし、今度の沈黙を破ったのは、相模の方だった。
「昨日、何で帰ったんだ…?」
「えっ…?」
少し考えたけど、何でそんなことを相模が言ってるのか分からなかった。もう1度相模が言った。
「俺が話す前に、帰るなよ。」
「だって、相模が何も言ってくれへんから…嫌われてるんちゃうかと思ってんやんか…。」
相模の方を見ると、相模は少し眉間にシワを寄せていた。
「誰も、今井のことを嫌いだなんて言ってない。」
「じゃあ、ボクのこと好き?」
思わず岬は、相模の方に身を乗り出して聞いてしまった。
相模は下を向いて、肩を震わして笑っている。岬は、同じクラスにいてても、相模が笑ったところを見たことがなかった。
「なぁ、相模。顔上げてぇや。相模が笑ってるん見てみたいねん。」
笑いが収まったのか、相模はまた無表情のまま、岬を見つめた。相模のツバを飲み込む音が聞こえる。それぐらい、この瞬間、岬と相模の周りは静かだった。
「もう1度、ちゃんと告白したら、見せる…。」
岬は、3回も告白することになるとは、思ってもみなかった。岬は、今度こそ相模から目を逸らさないようにと、心の中で誓ってから、意を決して相模の目を見た。
相模も、岬の目をずっと見ている。
「相模、好きです。付き合って欲しい。」
答えは………………?
『雪乃さん、好きです!!』(笑)これぞまさしく、宣戦布告です♪
この↑の言葉が書きたいがために、この小説を書きました(><)
雪乃さん、本当に20万突破、おめでとうございますvv いつもお世話になってるユエからの、ささやかな贈り物として、受け取ってあげてくださいね〜vv
ユエの中では、こんな先に続くような終わり方があっても良いと思うのです。先のことは、2人だけの秘密vってね。
答えは…、どうだったんでしょうね(笑)