不思議な月

 

 

 

 

「由良、凪、もうすぐ着くから起きなさい。いくら車に乗ってるからって、外から見えるんだから、カメラマンにでも見られたら、どうするんだ?」

 

運転をしながら、マネージャーの仲原さんが、チラッとバックミラーを除いて、オレ達に声をかけた。

 

「ふぇ?あっ・・・ゴメンなさい。寝るつもりは、なかったんですけど・・・。」

 

目を擦りながら、少し体を起こす。少し体が重く感じた。

隣りを見ると、由良がオレの方にもたれかけて、軽く寝息を立てていた。

そんな由良を、包み込むような笑みで見つめる。

 

「ホントに凪は、由良のことが大事なんだな。」

 

仲原さんの声で、慌てて顔を戻して、フッと外を見る。

 

「もう、薄明るいなぁ。仲原さん、今何時ですか?」

 

「もうすぐ、朝の6時ぐらいのはずだ。今日は、8時から撮影が始まるから、ホテルに着いても寝ているヒマはないからな・・・車の中で、少し寝たんなら、大丈夫だろ。」

 

ハンドルを握りしめて、ジッと前を見ながら仲原さんが、今日のスケジュールを話し出した。

窓の外を見ながら、話を聞いていく。一応、言われていることは耳に入ってるが、オレは、由良と出会ったころを思い返していた。

 

由良に初めて出会って、好きになり、なんだかんだの末に両思いになれて、由良のモデルの仕事をオレも紹介されて、一緒にやっている。

今、すごい幸せに感じる。

 

 

キュッとブレーキを踏む音がして、仲原さんを見ると、もうドアを開けようとしているところだった。

 

「おぃ、ホテルに到着だぞ!凪、由良を起こしてくれ。オレは、お前らの荷物を持ってフロントの方に行くから、後から来い。ちゃんとしたホテルだから、カメラマンとかいないと思うけど、十分に注意するんだぞ。」

 

言うだけ言うと、仲原さんは、さっさとホテルの中に入っていってしまった。

 

さて。この・・・爆睡中の由良を、どうやって起こそうかなぁ・・・?

一回寝たら、なかなか起きないもんだから、困った奴だ。

 

車の中から、キョロキョロっと辺りを見回して、人がいないことを確認した。

寝ている由良の唇からは、息をする音が聞こえる。

ゆっくりと由良の口元に、キスを落としていく。

 

――チュッ――

 

一回目・・・軽く触れる程度に、キスをする。

二回目・・・少し由良の唇の温かさを感じる程度に、キスをする。

三回目・・・寝息のせいで、薄く開いている唇の中に、舌を潜り込ませていく。

 

さすがに、三回目のキスで起きたのか、由良が少し身動きをする。

 

「んんっ・・・・んあっ?」

 

まだ、半寝ボケらしく、自分が何をされているのか分かっていないらしい・・・。

 

「んっ!?んんん!!・・・・・んなっ何、朝っぱらから、舌入れてきてるんだよ!!」

 

完全に眼が覚めたらしい由良に、手で体を押されて、仕方なく唇を離す。

眼が覚めて間もないのに、由良は顔を真っ赤にして、頬っぺたをプゥ〜ッと膨らまして、こっちを睨んでいる。

 

そんな由良も・・・・・・可愛い。

 

「由良が起こしても起きないからだろ?いつも2人で、眼が覚めた時にやってあげてる方法だったら、眼を覚ますかなって思ったんだよ。そんなに怒るんだったら、今度から起きた時、キスするのやめるから・・・。」

 

「え!?ダッ・・・ダメ!!うそだから。怒ってないから、目覚めのキスをやめるなんて、言わないでよ。ボク・・・凪のキス、大好きだから。」

 

少しからかってみたら、由良はすぐに騙されてくれて、慌ててくる。そんなウルウルした眼で見られると、もう1度、キスをしたくなるじゃないか。

 

そして・・・車を降りる前に、触れるようなキスをした。

その後、ホテルのロビーで待ってる仲原さんに、『遅い!!』と怒られたのは、予想がついただろう。

 

 

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「オッケー。由良、凪、遊んでいいぞー。」

 

カメラマンがオレ達に向って、撮影終了の声を出したから、オレはホッと一息をついた。ジーパンに白いシャツ姿で、浜辺に直に座っているオレと由良は、浜辺に寝っころがった。

 

「ねぇ、凪。さっき撮影の合間の休憩中に、凄い良い場所を見つけたんだけど、後で行ってみない?」

 

寝っ転がってる横で、由良が嬉しそうに話しているのを、オレは由良の柔らかい髪の毛を触りながら聞いていた。

撮影時間は意外に長引いて、朝から昼を過ぎ、結局終わった時間は夕方だった。日はまだあるけれど、もう2・30分もしたら、沈んでくるだろう。

 

「もうすぐ日が沈むけど、今から行っても大丈夫なんだろうな?」

 

「ボク、今年の夏は、まだ花火してないから、1回したいな。」

 

暗くなってくるから、あまり知らない場所は由良を連れて歩きたくないんだよなぁ・・・。由良は女の子と間違えられて、そなへんの男どもに声を掛けられるから、心配なんだよ・・・。

 

渋々と承諾したオレに、由良は手を引っ張って歩きだした。

 

 

「ほら、ここだよ。」

 

着いた場所は、海岸の端っこにある、岩場の近くだった。

確かに、海に入りに来た人達からは、目に付かない場所にあった。多分、この場所は、地元の人しか知らないところじゃないかと思う。

 

近くのコンビニで、買ってきた花火を袋からゴソゴソと取り出して、2人でお互いに手持ち花火や、打ち上げ花火、オレのお気に入りの20連発やら、絶え間なく花火をした。

 

本当は、20連発は手に持ってやる花火じゃないのに、オレはいつも手で持ってやる。けど・・・由良が『ボクも、それやる!』と言われたときは、由良にやらせたら危険だと思って、ヤメロと言ったにも関わらず、由良は20連発の導火線にライターで火をつけた。

 

その結果・・・・・由良の手にある20連発は上に向けて発射せずに、真横に飛んだ。そして、オレの体、横10cmのところを、すり抜けていったのである。

 

「もう絶対に、由良に20連発は渡さないからな!!好きな奴に向って撃つなんて、危険すぎる・・・。」

 

 

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「うわぁ〜、綺麗〜。見て、凪。ほらっ。」

 

花火がほとんど終わってしまって、残るは線香花火だけだった。

二人で浜辺に座り込んで、線香花火をやっていると、隣りで由良が嬉しそうに声を出した。

 

声を聞いて横の由良を見ると、由良は上を見上げている。そして、同じように上を見上げると・・・数え切れないほどの星と、雲が全くかかっていない三日月が空に浮かんでいる。

 

「ホントだな。オレらが住んでいるところじゃあ、高い建物が多すぎて、空が狭いからな。・・・なぁ、由良。海・・・入らないか?」

 

「えっ?このままで・・・?」

 

上を向いていた由良は、少し驚いた声をして、オレの方を見た。

オレは、由良をお姫様だっこで抱きかかえて、海の方へと歩いていった。由良は、暴れることはせず、しっかりとオレの首元にしがみついている。

 

――パシャッ――

 

裸足で海へと足を向けた。海水は、冷たくなっていて、足の先から背中へとゾクッと何かが突き抜ける感じがした。

膝の辺りまで、海の中に入っていき、由良をそっと降ろす。

 

「冷たいっ・・・凪、風邪引いちゃうよ?」

 

心配そうにオレを見ている由良に、クスッと笑って、おでこにキスをした。月の光で、由良の顔が赤くなっていくのが分かる。そんな姿が可愛くて、由良の顔中にキスを落とす。

 

「好きだよ・・・由良。」

 

「んっ・・・ボクも、凪のこと・・・好き。」

 

オレのキスに感じながら、一生懸命答えてくれる由良が、とても愛おしく思う。嬉しくて、由良をきつく抱きしめようとした。

 

「由良・・・、わっ!うわぁぁっ!!」

 

由良をきつく抱きしめた途端に、足が海の波にとられて、バランスを崩してしまったのだ。抱きしめられていた由良も、オレの道連れとして、一緒にこけてしまった。

 

少し大きい水しぶきが上がって、収まったころ、オレ達2人は全身ずぶ濡れになってしまっていた。

ビックリした顔で、お互いの目を見つめて・・・。

 

「プッ!アハハッ・・・凪ってば、あんなとこで普通コケたりするー?」

 

「うっ・・・うるさい!しょーがないだろ、海が全部悪いんだよっ。」

 

くそっ、こんなとこでコケるなんて、恥ずかしいじゃないか!!しかも、言い訳がましく、海のせいとかにするし・・・。

 

濡れたシャツが、体に張り付いて気持ち悪い。

ジーパンが水を染み込んで、動きにくい。

 

「凪・・・色気たっぷり・・・。」

 

顔をしかめてたオレは、ボソッと呟く由良の声を聞いて、オレと一緒に濡れた由良の方を見た。

 

「ははっ何言ってんだよ・・・、っ!!由良・・・オマエの方が色気出てる。スゲェ、綺麗。」

 

思わず見惚れてしまうほどだった。

由良の姿は、白いシャツがピッタリと肌にくっついて、胸の突起の部分がシャツの上からでも分かる。濡れたせいで、目が潤んでいるように見える。唇も濡れて、今すぐにでも奪いたくなる。

 

ヤバイ・・・。こんな海の中で、ムラムラと・・・。どうしろって言うんだ?この状況で!!でも・・・あぁっ、オレは節操なしか!?それでも・・・由良とヤリたい!!

 

オレの“理性”と“本能”が頭の中で戦っていたが、“本能”の方が強かったらしい。10代の年頃の男の子に、我慢しろってのがムリだろう。

 

由良の胸の突起に、手を伸ばし、指先で摘んだ。

 

「やっ・・・んん。凪、こんなところで、ヤダよ。」

 

「オレは、今、由良とヤリたい。・・・ダメか?」

 

由良の強張った顔を、やんわりと撫でて、両手で顔を包み込む。オレの手の中で、由良の緊張が解けていくのが分かる。

 

「ん、じゃぁ・・・せめて海から、出よ。今のでボクも、凪と・・・したくなっちゃったし・・・。」

 

夜の冷たい海で、ギュッと抱きついてくる由良の体温が気持ち良い。同じように、由良を抱きしめて、海に入ったときと一緒で、お姫様だっこをして、海を出る。

 

 

「由良、思いっきし、愛してやるからな。覚悟しろよ。」

 

 

☆、・゜・。..* END *..。・゜・、☆

 

2000HITのリクエスト。

杷月かのさまからリク頂きました。

『由良くんと凪くんの月明かりの下で海水浴&キスがあるとvv』

ってな感じのリクエストです。

海水浴…確かに書けたんですけど、月明かりがどうも…(汗)

キスってのは全然大丈夫でしたね〜(笑)

 

 

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