光源氏大作戦
「野上(のがみ)くん、一体、僕に相談事って何かな?実習生の僕が頼りになるとは思えないけど、話ぐらい聞く事出来るし……ね。」
中学へ実習に来てから、今日で10日目。
後2日を残すのみとなっていた。
僕の担当している2年D組は、みんな良い子ばかりだった。
今、僕に相談をしたいと言って目の前にいる野上くんも、D組なんだ。
「俺………。」
「ん?」
「俺、ち〜ちゃん先生のことが好きだ。」
良い子ばかりだと………思ってたんだけど、ねぇ。
どうして僕は、年下で、生徒で、僕より身長の低い子から告白なんてされてるんだろう?
僕は……どっちかって言うと、年上が好きなんだけどね。
それに………僕は、『受け』る側なんだけど。
僕より背のちっちゃい野上くんが僕を抱けるのかな?
「もうちょっと考えてね。僕は男だし、中学校は共学でしょ?僕みたいな男じゃなくても他に可愛い女の子はいっぱいいると思うけど?」
もしかしたら、僕が好きって言うのは、一時の気の迷いかも知れないんだ。
若いこれからの少年を無理にそんな道に入れるってのも…って思うんだよね。
そんな風に考えながら、僕はもう一つの心の中で『僕ってちゃんと先生みたいだねぇ。』とか思ってたりする…。
「ち〜ちゃん先生を初めて見たときから、そなへんの女どもなんて目に入らなくなった。ち〜ちゃん先生は、俺のこと嫌い?」
中学生の少年がそんな切なそうな目で僕を見ないで欲しい…。
確かに野上くんは、後5年ぐらい経てば、かなりの男前になってるんだろうけど…。
−−−??
もしかして…ここで野上くんを手懐けておけば、『光源氏』みたいになる?
それってちょっと…おもしろいかもしんない。
どうしよう……僕の悪戯心が楽しんでるんだけど。
「野上くんのことは、そりゃあ、生徒だから好きだよ?でもね、はっきり言うと、僕は自分より背が低い人と付き合うつもりはないんだ。僕は今、172cmで、野上くんは……?どうみても僕よりかはちっちゃいと思うけど?」
諦めさせようとしているのに、僕は飛びっきりの笑顔で野上くんに尋ねる。
これじゃあ…諦めきれるわけないよね?
「165cm…。でも、俺は今、成長期だから!!」
若いだけあって、元気もいいよね。
僕より…7歳年下か〜。
年上じゃなくて年下も、ちょっと良いかも…。
「野上くんが成長期でも、今すぐ付き合うなんて無理だよ。野上くんが僕よりも背が高くなったら考えてあげる。」
「そんなぁ…。」
「それまで待てないって言うんならいいよ?野上くんが僕のこと、そんなに好きじゃなかったってことだから…ね。」
野上くん…急に下向いて黙っちゃった。
ちょっと…無理を言いすぎたかな?
でも…男同士なんて、それなりの覚悟がないと駄目なんだよ。
自分の意志の強さがないと。
付き合ってもすぐに駄目になっちゃうから。
◇
「俺が……ち〜ちゃんよりも背が高くなったら、ち〜ちゃん付き合ってくれるのか?考えてくれるじゃなくて、付き合ってくれるかくれないか今ハッキリして欲しい。」
うわぁ…目がものすごっく真剣…。
僕のこと、好きなんだって分かる…。
「そうだね……僕よりも大きくなったら、家に来てもいいよ。この意味…分かる?」
僕がそう言うと、野上くんの顔が真っ赤になった。
どうやら分かったみたい。
「じゃあ…今から僕の連絡先と家の地図書いて渡すから。でも!野上くんが僕よりも背が高くなるまで電話もしないし、家にも来ないこと。もし約束やぶったら、絶対に付き合わないから。」
野上くんの歯が食い縛るのが分かる。
「分かった…。約束守る…。だから、もし…もし俺が約束守ったら、ち〜ちゃんも守ってくれよ?じゃないと俺…。」
「うん。分かってる。約束として…今はこれで我慢してね。」
野上くんのほっぺたに僕はそっとキスをしてあげた。
固まっちゃっている野上くんの顔を下から覗くように見たら、野上くんったら我に返って真っ赤になっちゃって、しまいによろけて壁に頭ぶつけるんだから。
「いってぇ……。」
「大丈夫?たんこぶ出来てない?」
「え?え?ち〜ちゃんセンセ……?さっきのって。」
「う〜ん。ほっぺにちゅうのこと?」
野上くんが耳まで真っ赤になって、ゆでダコみたい。
何だか……可愛いねぇ。
この野上くんが、もうちょっと大人になったら…きっとモテそう。
僕って……すごい得したんじゃないかな。
「ちゅうって………、何で!?」
「え?だから言ったじゃない。約束守る証だよ?だから……………。」
『僕より背が高くなったら、僕に会いに来てね。』
野上くん……本当にち〜ちゃんで良いんですか?
結構、子悪魔だと思うんですけどねぇ〜。
みなさまはどう思われました??
こんなSSに、しょうがねぇ、感想書いてやるか。って素敵な方がおれば、BBSかメールでお願いしますvv
2002/03/29