# Amnesia 

 

 

 

「おまえ、誰?」

 

僕は頭がおかしくなった…そう思った。

雅君が僕を忘れるわけがない。

 

 

今日の午後、雅くんは大学で階段から落ちそうになった女の子を庇って、雅くん自身が丸々一階分転げ落ちた。

少しの打撲で済んだことが奇跡的だと皆は言った。場合によっては死に直面する危険性すらあるのだから。けれど……。

 

雅くんは、落ちたときに頭を強く打ち付けたらしい。きっと全部庇い切れなかったんだろう。手では覆いきれなかったところがちょうど壁にぶつけたのだ。

 

雅くんは…………記憶喪失になった。

 

一般的な知識は失っていなかったために、普段の生活には問題なかった。

それ以外は何も覚えていなかった。

 

昨日のことも。

大学の友達のことも。

僕以外に一番中のいい祐樹のことも。

雅くんの母親、由佳子さんのことも。

誰のことも。

 

僕のことも…。

覚えていなかった。

 

雅くん自身のことも。

 

目の前が真っ暗になった。

 

 

雅くんが記憶喪失になった次の日、雅くんの付き添いとして一緒に病院に行った。医者は一時的なものだと言ったが、いつ治るかはわからないとも言った。

雅くんには僕との関係を幼なじみと言っておいた。いきなり男の雅くんが男の僕に恋人同士と言われてもビックリするだけだろうから。

 

雅くんを困らせたくない。

 

 

病院に行くために今日は雅くんに付き合って大学を休んだ。

 

「どこか行きたい所ある?」

 

幼なじみだと名乗る僕に、まだ馴染めない雅くんは戸惑いながら答えた。

 

「俺が記憶を失う前に、よく行ってた所ってどこ?」

 

「う〜ん。そなへんに買い物とか、僕の部屋とか…。先週は雅くんと二人で映画を見に行ったんだけど?」

 

「………その映画、もう一回見てもいいか?」

 

「良いよ。」

 

「その後、おまえの部屋に行く。」

 

何だか言い方が、雅くんらしかった。

雅くんの性格までは変わってないみたいで、安心した。けど。

 

「雅くん、僕のこと『あんた』じゃなくて『猛』って名前で読んでくれない?」

 

「たけ…る…?」

 

「そう。雅くんは僕のことを呼び捨てにしていたから、何かそう呼んで貰わないと変な感じで…。」

 

にっこりと僕が微笑むと、雅くんは少し頬を赤らめて声には出さず頷いた。

 

可愛い。

ちょっと素直な雅くんって…良いかも知れない。

今すぐ抱きたいけど、今は駄目だ。我慢我慢。

 

でも…このまま記憶が戻らなかったら、僕はどうしたらいいんだろう?

雅くんには本当のことを言わずに、一生幼なじみで通す?

そうすると、きっと雅くんのそばにいられない日が来る。

きっと我慢できなくなる。

 

もう一度、雅くんに好きになってもらう?

好きになってくれる?

きっと好きになってくれる。

 

…本当のことを言おう。

 

 

映画を見たとき、雅くんは映画の内容を覚えていた。けれど、誰と一緒かってことを覚えていなく、やっぱり僕のことを思い出してくれなかった。

雅くん家の隣りにあるマンションの僕の部屋に行き、雅くんは座ってベットにもたれかけて辺りを見回した。

 

「何となく、覚えてるかも。」

 

「本当っ!?」

 

思わず雅くんの両腕を掴んで、雅くんに迫っていた。

 

「う…うん。多分な。多分だぞ!だからちょっと離れろ!」

 

多分でも嬉しかった。

僕の部屋を少しでも覚えていることが嬉しかった。

 

真っ赤になっている雅くんは僕を突っぱねるように僕の胸を押したけど、僕はそんなことかまいやしなかった。雅くんが逃げられないように、しっかりと両腕を掴む。

今、雅くんに言わなくてどうする?と自分の中で言っている。

 

「雅くん…僕は雅くんの幼なじみなんかじゃないんだ。いや、幼なじみだけど……あの。」

 

「何言ってんだ?おまえ、自分から俺の幼なじみって言ったんじゃないのか?…俺を騙したのか?」

 

雅くんの眉間にシワが寄せられる。疑い深い目で、僕を見る。

そんな目で、僕を見ないで欲しい。

そうじゃないんだ。そうじゃない。

 

 

 

「僕と雅くんは、恋人同士だったんだ。」

 

「えっ??」

 

雅くんの身体から急に力が抜けたのか、ぼけっとした顔で僕を見ている。雅くんにつられて僕の力も抜けていたのか、雅くんは僕の手からするりと腕の抜け出し、ふらりと立ち上がった。

雅くんは僕に声をかけずに、玄関の方へと歩き出す。それを引き止めようとして、とっさに立ち上がって雅くんの腕を取ろうとしたとき、足元が絡まってこけそうになった。

 

「危ないっ!」

 

雅くんの驚いた声が聞こえた。

 

壁に頭をぶつける寸前で目をつぶったけど、何故か当たったところは柔らかかった。目を開くと、雅くんがかばってくれたらしく、僕は無事だった。

けど…。

 

「雅くん!!」

 

僕をかばって、雅くんが頭を壁に打ち付けた。

何度も気を失っている雅くんの名前を呼ぶと、雅くんはすぐに目を覚まし、僕の方をぼんやりと眺めている。

 

「雅くん?大丈夫?」

 

「………た、け、る?」

 

「雅くん?」

 

「俺…どうしてここにいるんだ?確か…大学にいたはずだけど。」

 

僕は嬉しくて、雅くんを力いっぱい抱きしめた。

雅くんはまだ何が何だか分からないようすだったけど、ゆっくりながら僕の背中に腕を廻した。

雅くんの顎を持ち上げて、ついばむように何度もキスをした。雅くんから力が抜けていくのを確認して、舌を滑り込ませ、たっぷりと長い時間をかけて雅くんの唇を味わった。

 

「…ふぁっ…、んっ、猛。」

 

「雅くん、僕のこと、好き?」

 

「あっ、あたり…まえ、だろ…んんっ。」

 

潤んだ目つきで僕を睨んでくる雅くんは、僕をその気にさせるには十分だった。

 

 

「んっ…やぁ…んあぁっ。」

 

雅くんは全部服を剥ぎ取って、裸で僕のベットの上にいた。

雅くんの良い所を知り尽くした僕は、的確に胸の二つの引っかかりと脇腹を攻め上げる。

 

「や…じゃないと思うけど?ほら、雅くんのモノが触ってもいないのに立ち上がってトロトロと半透明な白い液体を流しているよ?」

 

「やぁん…もっ…、たけ…るっ。」

 

「雅くん、どうして欲しい?」

 

あえて雅くんの中心には触れずに、太腿あたりを撫でる。

 

「触っ…て……。」

 

「どこを?ちゃんと言わないと、雅くんが触って欲しい所が分からないよ。」

 

本当は目の前に立ち上がっている雅くんのモノだって分かっているけど、雅くんの潤んだ目でお願いされるのがたまらない。

雅くんは首を横に振って、いやいやという動作をする。

 

「たけるっ……いぢわ…るだ。」

 

「そんなこと何度も身体を繋げているんだから、知ってると思うけど。で?どこ?」

 

頬だけでなく耳まで真っ赤にした雅くんの口からは、恥ずかしがるように小さい声が聞こえてきた。

 

 

「………俺のモノ…、触って?」

 

雅くんの立ち上がって苦しそうなモノを、そっと握りながら手を上下させる。

雅くんから流れている液体をもう片方の中指にまとわりつけて、雅くんのモノよりもっと奥へと指を滑らしていく。かたく閉じてしまっている蕾を指でつつきながら、ゆっくりと埋め込んでいった。

 

何度も何度も指を出し入れして、たっぷりと時間をかけて指を三本まで馴染ませていった。三本の指の一本がある一点に引っかかるたびに、雅くんの身体は反り返る。

雅くんのモノは、後ろからの刺激によって、白濁を吐き出してしまった。

 

「んああぁっ!!」

 

「指だけでイったんだね。じゃあ、もう僕のはいらない?」

 

指を抜いて雅くんの身体から離れていこうとすると、雅くんは僕に抱きついて足を絡めてきた。

 

「駄目っ……、ンッ…、もっ…たけ…る…欲しぃ……。」

 

雅くんの艶やかな表情と声で、僕の中心の血が逆流するかのように疼いた。僕も我慢の限界だった。雅くんの蕾に僕のモノをそっと押し当てて、息を吐き、一気に貫いた。

 

「やあぁぁ―――。…ンッ、…イ…いい…。」

 

「雅くんの中が、僕のにまとわりついてくるっ。そんなに、…気持ちいい?」

 

雅くんは僕の言葉を聞いて恥ずかしそうに顔を赤らめ、いっそう僕のモノを締め付けてくる。

 

「雅くん…、そんなに締め付けたら、動けない。雅くんをもっと気持ち良くさせたいから、ね、…力を抜いて。」

 

耳元で息を吹きかけるように囁く。

 

「あっ……。」

 

僕のを受け入れたときから緊張していた雅くんの身体から、だんだんと力が抜けていくようだった。力が抜けたのが合図かのように、僕は雅くんを揺さぶった。

 

「あっ、あっ、あっ……んあっ…。」

 

それにあわせるように、雅くんの口から感美の声が漏れる。

 

「雅くん、愛してる。」

 

「んっ……、俺…も…。」

 

「俺も?」

 

「愛し…て……る。…んっ、あっ…もう…。」

 

雅くんのモノはおなかにつくぐらいに立ち上がっていて、先端からはタラタラととろけるように液が流れている。

 

「もう…駄目?…じゃあ……。」

 

僕も雅くんと一緒で限界を迎えていたため、先端を残して腰を引き、そして雅くんの最奥を目指して勢いよく腰を進めた。

 

「んあああぁぁぁ―――。」

 

「うっ…。」

 

 

雅くんのモノからは弾けるように外へと白濁が飛び出し、その締め付けによって僕も雅くんの中に放っていた。

 

 

一応、記憶が戻ったばっかりということで、僕はいつも野獣野獣と言われつづけていたけど、今回ばかりは雅くんに無理をさせないようにしたつもりだ。

僕のベットで気持ち良さそうに寝ている雅くんのおでこに、僕はそっとキスをした。

 

目覚めた雅くんに、

 

「記憶戻ったばかりの俺にあんなことするなんて…少しは我慢しろよ。野獣。」

 

と言われるとは、思いもせずに…。

 

 

Happy End

 


無条件リク最後!笠原有紀さまからリクしてもらいましたvv

『幼なじみの番外編で、雅孝が記憶喪失になる話をお願いします。もちろん最後は甘甘でアダルチックなハッピーエンドでお願いします。』

前後編にしようか悩んだんですけど、やっぱり一つにまとめました。

どうしてもえっちシーンを入れると、長くなるんですよね…。

いや別に猛がしつこいって言うわけじゃなくて…(爆)

でも記憶喪失って恐いですよね〜。あのまま治らなかったらどうすんだ?とか思いつつ書いてました(^^;

結局記憶なくなってからほぼ1・2日ぐらいで治っちゃってますけど、お気になさらずに…ほほほっvv

 

読んでくれてありがとうございますvv良ければBBSなんぞにカキコしていただれば、もっと喜びますvv

 

 

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