||| あいまいな関係 |||

 

 

 

 

 

小鳥がさえずる朝、少し開いたカーテンの隙間から差し込む光がベットを映し出している。ベットの布団の膨らみは、誰かが寝ていることを象徴しているようだった。

そしてそのベットを見下ろす人物がいた。

 

 

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「希里(きり)!いつまで寝ているんだ?今日は学校がある日だろう。そろそろ起きなさい。」

 

まどろんだ眠りを妨げる音が聞こえる。

僕はもぞもぞと布団の中で動きながらも、顔だけは布団から出て朝の光を受けた。目を開こうとして、眩しさのあまりすぐに閉じてしまった。

 

「休む〜。」

 

それだけ言うと、僕はまた布団の中に入り、眠りに落ちようとしていた。でも、だけどあなたは黙ってそれを見逃してはくれない。

 

「そんなことでもう3日も休んでいるじゃないか。留年してもいいのか?」

 

温かいものが身体から離れていく感じがして、嫌々ながら目を開けると布団がめくられていた。上半身裸のままだった僕は、思わずあなたを睨んでいた。

 

「もうすでに1回留年してるし。」

 

あなたがため息をついて、それから痛い一言を僕に言ってくれた。

 

「俺との差がこれ以上開いてもいいのか?」

 

そう。

僕は高校生で、あたなは社会人。

一刻も早く社会に出ないと、あなたには追いつけない。

 

「やだ。」

 

「なら学校へ行きなさい。俺は会社に行くから。希里?ちゃんと行くんだぞ?」

 

「………はぁい。」

 

あなたは僕のおでこにキスをして家をあとにした。

 

僕も学校へ行かないと…。

あなたとの約束を守るために。

あなたに追いつくために。

 

 

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授業を聞いていても面白くない。去年と同じことを言ってる。出席日数が足りないだけで留年した僕には、授業なんてどうでもいい。ただここに座ってたらいいのだから。

窓側の後ろから2番目の席に座っている僕は、外を眺めながら携帯をポケットから取り出した。先生に見付からないようにメールを打つ。

 

『ヒマ。』

 

あなたは仕事中なのに、僕にちゃんと返事をしてくれる。

 

『真面目に授業を聞きなさい。』

 

『何時ごろに帰ってくるの?』

 

『9時すぎになると思う。』

 

『夕飯作って待ってるね♪』

 

『期待しておくよ。』

 

すぐにあたなとのやりとりが終わってしまった。携帯を手に持ったまま窓の外を眺める。手の中の携帯が震えた。

僕は急いで携帯をちゃんと持ち、受信ボックスを開ける。

 

『希里、愛してるよ。』

 

思わず顔が緩んでしまう。僕の目の前だと言ってくれないのに。ほんと些細な愛の言葉がすごく嬉しかった。

 

『僕もvv

返信をすると、今度は携帯をポケットの中にしまった。

 

 

 

いつの間にか授業が終わっていたらしい。クラスの中がザワザワとしている。

 

「なぁ、葛西(かさい)。携帯持ってたんだな。」

 

後ろから声が聞こえてきて振りかえると、同じクラスだけど留年している僕よりかは一つ年下の宮本が立っていた。

 

「なんで?」

 

「持ってなさそうだから。」

 

「持ってなさそうで悪かったね。」

 

ちょっとムッとした僕は、早く帰ろうとカバンを取り立ち上がろうとした。宮本はそんな僕の行動に慌てたのか、手を横に振りながら弁解した。仕方がないから、もう一度座りなおす。

 

「ちっ、違うって。悪い意味じゃないって。」

 

「そう。で?」

 

「携帯の番号と、メルアド教えて?」

 

普段からあまり僕には話してこないクラスメイトと違って、こいつだけは良く話し掛けてくると思ってはいたけど…。まさか僕と仲良くなりたかったとは…。

 

けど、この携帯は………。

 

「無理。」

 

あなたとだけを繋ぐ携帯だから…………。

 

 

 

 

「やっぱりか。葛西なら、そう言うかもと思ってたんだよなぁ〜。でも諦めないからな。携帯持ってるって分かったし、これからは聞きまくってやる。じゃあ、また明日な〜。」

 

廊下で待ってるっぽい友達のところへ、宮本は俺に手を振りながら走っていった。

 

一つ違うだけで、何か宮本がすごく若く見える。

一つだけでこんなに差を感じるなら、あなたと9歳も離れている僕はどれだけ子供に見えるんだろう。

 

 

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夜の10時半を過ぎても、あなたは帰ってこない。僕が作った夕食は、ほとんど冷めてしまった。

 

このまま帰ってこなかったら?

やっぱり女の人が良いって思ったら?

男の僕なんていらなくなったら?

他に好きな人が出来たら?

 

様々な思いが頭の中をよぎってしまい、そんな思いを消し去るかのように頭を横に振る。何度もそう思って、あなたに内緒で泣いただろう。今も考えただけで、目が潤んでくる。

 

ドアが開く音が聞こえ、同時にあなたの声も聞こえてきた。

 

「ただいま。」

 

慌てて目元に溜まっている涙を手でぬぐって、あなたを迎える。

 

「おかえりなさい。」

 

あなたは僕を見つけると、引き寄せて抱きしめてくれた。

 

「悪い、仕事がゴタゴタして遅くなった。随分待ったか?」

 

「帰ってこなかったらどうしようと思った。」

 

「俺が希里を手放すわけないだろう?」

 

「うん。」

 

分かっているけど不安になると、どうしても嫌な方へと考えてしまう。あなたは悪い癖だと言うけれど、なかなか治らない。

 

「そんなに不安にさせてるなんて、俺の愛情の態度が足りないのか?」

 

「そうじゃないけど。」

 

「今日はたっぷりと希里に愛情を与えてやろう。」

 

僕よりも背が頭半分ぐらいあなたを見上げると、あなたは僕を抱きしめたまま長い長いキスをしてくれた。

 

甘くてしびれるようなキス。

『愛してる』って言葉が伝わってくる。

 

あなたよりかは劣るけど、僕も一生懸命にキスに答える。

 

 

 

「希里、キスが上手くなったな。」

 

「兄さんのおかげかな。」

 

 

兄さんと僕は、目を合わしてクスッと笑った。

 

 

Happy End

 

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無条件リク2発目、suzukiさまのリクエスト♪

『リーマン×学生ってかんじで、学生の方は生活力が無いかんじ。こう一人だと生きてけなさそうな...。微妙にパラサイト?』

というようなリクを頂きました〜。

…………スミマセン。パラサイトの意味が分かっていませんでした!!

ってゆうか、書いた今も、分かってないんですねぇ。

勘弁してください…。リーマン視点にしようとも考えたんですけど、やっぱり書けないわ〜ってことで学生視点でございます。

最後の呼び名ですけど、「兄さん」にしようか「名前」にしようか悩みました。でもこんな終わりでもいいんじゃい?って思って…。一応リーマン×学生ですし…ね、suzukiさまvv 遊び心のあるユエを温かい気持ちで許してくださいませvv

 

読んでくれてありがとうございます♪よければBBSにカキコなんざしていただければ、もっと喜びますvv

 

 

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